法曹界で働くためにはどのような学位を取得すべきなのでしょうか。やはり法学部出身者が有利なのでしょうか。司法試験の受験資格という点では法学部が最も効率的で有利ですが、合格後実務家になった後は、法学部以外の学位でも専門性を確立する手助けになります。
ここでは、ロースクール入学前と法律家としての実務開始後という2つの視点から、取得すべき学位について概説します。
ロースクール入学に必要な学位は?
日本では法科大学院を修了し、「法務博士」を取得することが司法試験受験のための条件となっています。法科大学院とは、弁護士、検察官、裁判官といった法曹養成に特化した教育を施すロースクールのことです。法科大学院入学は全ての4年生大学の卒業者が対象ですが、実際は法学部卒業者が法科大学院へ進学するのが主流です。
一方米国では、ロースクールを修了してJ.D.(Juris Doctor:法務博士)若しくはLL.M.(Master of Laws:法学修士)を取得することが各州の司法試験(Bar Exam)受験の条件となります。
いずれも法律の実務を学ぶ大学院であり、飛び級が認められない限り、入学には4年制大学で学士号を取得していなければなりません。日本と違い、アメリカでは一般的に4年制大学における法学部はなく、Bachelor of ArtsやBachelor of Scienceなどを取得した後にロースクールへ入学します。(米国の弁護士資格についてはこちらのブログ記事へ)
4年制大学で取得すべき学位〜まずは法学
日本の法科大学院ですが、法学部卒業者であれば2年で修了可能な「既習者コース」を取ることができます。入学前に法律の勉強をしていない場合は、3年間の「未修者コース」が用意されています。
これはアメリカのロースクールに類似した制度で、4年生大学の学部卒業生を対象としたJ.D.コース(3年制課程)と、米国以外での法学部、ロースクールの卒業生を対象としたLL.M.コース(1年制課程)があるのと似ています。アメリカの弁護士資格取得を目指す場合、日本の法学部卒業者は1年課程のLL.M.コースを取ることができます。
従ってなるべく早く資格取得を目指したい人や、米国での資格取得を目指す人にとっては、法学部を卒業して法学士を取得しておくことが最も効率的といえるでしょう。法学部で同級生と一緒に法科大学院入学試験を一緒に目指せばモチベーションアップにもつながりますし、実務家となった後でも、大学のネットワークに助けられることもあります。
なお、法科大学院修了で取得できる「法務博士」は、研究者養成を目的とする大学院の博士課程修了者に付与される「法学博士」とは異なりますので留意しましょう。法学博士が研究目的であるのに対し、法務博士は実務家を目指す人のための学位で、いわゆる修士号に近い感覚です。そして法務博士号取得の最大の目的が司法試験の受験資格を得ることにあるのも、法学博士との大きな違いです。
その他の学位〜経済学、経営学、工学、医学
では、法学士以外の選択肢はどうでしょうか。
法学士の次に法曹実務家として役に立つと考えられるのは、経済学士と経営学士です。大規模渉外事務所へ就職した場合には、株式発行や上場、合併(M&A)といった企業の経済活動をサポートする仕事がメインとなりますので、経済活動や会社経営への理解が深いことは実務家にとって強みになります。マクロ経済学のような大きな学問より、経営学のほうが実務家としての仕事と親和性があるでしょう。
また、工学や医学が有用な場合も考えられます。4年制大学で工学士や医学士を取得している場合、法律事務所への就職後に専門的なプラクティスグループへ配属される可能性が高まります。
インハウスカウンセル(企業法務)のキャリアを考える場合にも、専門性があると選択肢が広がります。どの業界でも学位よりも実務経験が重宝される傾向がありますが、例えば一部の業種(ヘルスケア業界等)では、リーガルカウンセルの採用にあたってその分野での専門学位を活用できる場合もあります。
まとめ
法務キャリアを希望する場合、まずは大学で法学士の取得を目指すのがベストです。しかし、他に興味がある学問分野がある場合には、法律は法科大学院で3年間しっかり勉強することにして、大学では専門性を追求することも立派なキャリア構築になります。エイペックスでも、法律事務所だけでなく多種多様な企業のリーガルポジションを取り扱っていますので、ご自身のバックグラウンドを活かして活躍できるキャリアをプロと一緒に見つけてみてはいかがでしょうか?