医薬品などの開発業務委託機関であるCROへの転職を考えている方は、「CRAは激務」「CRAはキツい」といったエピソードを一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。確かにCRAは激務な一面もありますが、他の職種よりも融通が利く点もたくさんあります。
そこでCRA経験者に、CRAの「典型的な一週間のスケジュール」と「激務と言われる実際の業務例」とともに、「CRAの仕事がキツいと言われる理由」、「求められるスキルレベル」、「職務の魅力」について話を聞きました。CRAについてより深く理解できる内容となっていますので、ぜひ転職時の参考にしてみてください。
目次:
CRAの一週間のスケジュール例
CRA業務の実際例
CRAはなぜ激務と言われるのか?
なぜCRAは高いレベルのスキルが求められるのか?
CRAの魅力
CRAの一週間のスケジュール例
本当にCRAはきついスケジュールをこなしているのでしょうか?
まず、CRA経験者に典型的な一週間のスケジュールを聞きましたので、下記を見てみてください。
CRAの仕事は、おおまかには外勤と内勤に分かれており、医療機関を訪問して治験の進捗状況を確認したり、医療スタッフやCRC(治験コーディネーター)と情報交換を行う外勤業務と、報告書の作成やCRF(症例報告書)のチェックを行う内勤業務に分かれます。
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
外勤日 | 内勤日(自宅) | 外勤日 | 内勤日(オフィス)+移動日 | 外勤日 | |
仕事内容 | 8:00~9:00 直接施設訪問のため移動 9:00~15:00 施設訪問:カルテとEDCの整合性チェック・CRCに進捗状況を確認(合間に昼食) 15:00~16:00 会社へ移動 16:00~18:00 出張で得た情報の整理・上司へ報告 18:00 帰宅 | 9:00~12:00 前日分のモニタリング報告書作成・メール対応 12:00~13:00 昼休憩 13:00~15:00 CRCからの問い合わせ対応・補助資料作成・モニタリング報告書作成 15:00~16:00 チームミーティング 16:00~18:00 明日の出張準備 | 8:00~9:00 直接施設訪問のため移動 9:00~15:00 施設訪問:カルテとEDCの整合性チェック(合間に昼食) 15:00~15:30 治験責任医師とミーティング 15:30~17:00 医師との面談を踏まえ、CRCと今後の対応を協議 17:00 直帰 | 9:00~12:00 前日分のモニタリング報告書作成・メール対応 12:00~13:00 昼休憩 13:00~16:00 CRCからの問い合わせ対応・補助資料作成・モニタリング報告書作成 16:00 遠方施設へ移動開始(移動中に翌日の準備) 19:00 ホテル着、宿泊 | 9:30~10:00 施設へ移動 10:00~15:00 施設訪問:カルテとEDCの整合性チェック(合間に昼食) 15:00~15:30 治験責任医師とミーティング 15:30~17:00 医師との面談を踏まえ、CRCと今後の対応を協議 16:00~19:00 移動(移動中に出張で得た情報の整理・上司へ報告) 20:00 帰宅 |
CRAは出張が伴う職種となりますが、頻度は勤める会社やプロジェクトの忙しさによります。親会社が海外にある外資系CROでは出張回数に制限がある場合がほとんどですので、出張に関しては内資系CROのほうが回数が多いと言えるでしょう。
CRA業務の実際例
一週間のスケジュールが分かったところで、ここからはCRA経験者が感じた激務に関する実際例をご紹介します。CRAの仕事をよりイメージしやすいように、具体的なエピソードを集めていますので参考にしてみてください。
1.医療機関側との密接なコミュニケーションが求められる
CRAの顧客は製薬メーカーと病院などの医療機関となりますが、日々のコミュニケーションは病院に勤める医療スタッフ、CRCが最も多くなります。
その中で、CRAに対し対応が不親切、説明が分かりにくいなどのクレームを受けることがあります。本人が謝罪する程度で済む場合もあれば、担当CRA交代など大事になることも稀にあります。
CRAに一般の営業職のような顧客対応のイメージがあるのは、こういった事例があるからかもしれません。クレームをなくし顧客満足度を高めるためにも、日頃から医療機関とのコミュニケーションは密に取っておくことが大切な仕事になります。
2.忙しい時期とそうでない時期に差がある
CRAは、繁忙期とそうでない時期の差がかなり激しい仕事です。その差はCRCからの問い合わせが多いかどうかで決まり、患者さんに関わることですのでどんなときでもCRCからの問い合わせには迅速に対応しなければいけません。特に、患者さんの組み入れ時期や初回検査時期にはCRCからの問い合わせが増える可能性があるため、休日でも電話対応やメール対応などが発生することもあります。常に気が抜けない時期が一定期間生まれるため、激務だと感じる人もいるでしょう。
3.治験開始時期・終了時期はかなり忙しいため残業になることも多い
治験開始・終了の時期は、CRAにとってかなりの正念場です。やらなければいけないタスクが多く、かつ期限がタイトであることがほとんどです。ベテランCRAであれば就業時間内に終わらせることもできますが、経験が浅いCRAは残業になることも少なくありません。治験期間中ずっと残業が続くことはありませんが、ある程度の残業は覚悟しておいたほうが良いでしょう。
4.さまざまな書類作成が必要で提出期限も厳しい
CRAは、『いつ・どこで・なにを・なぜしたのか』をすべて定めされた書類に残しておく必要があります。そのため病院を訪問をした際にはもちろん、メールや電話であっても重要なものは記録として書類作成が必要になります。数も膨大ですが提出期限も厳しく、どんなに出張で忙しくても締切厳守であるため、常に提出期限に追われている感覚で仕事をする覚悟は必要かもしれません。
5. 簡潔に要点を伝えられる文章能力が必要
前述のようにCRAは文章を書く機会が多く、特にメールに関しては毎日何通ものやり取りが発生します。外来業務で忙しい医師やCRCには電話対応はあまり好まれませんので、自分が伝えたいことをメールでどれだけ簡潔に伝えられるかがとても重要になってきます。そのほかプロジェクト毎に必要な書類、議事録、発表資料の作成などもあり、文章能力を求められる機会は意外とたくさんあります。
CRAはなぜ激務と言われるのか?
CRAが激務といわれる第一の理由は、上記で分かるように
・営業職のような「コミュニケーション能力」「タフなメンタル」
・事務職のような「緻密な正確性」
という相反する両方のスキルを求められるからです。どちらか1つでも高いレベルまで習得しようとするとかなりの努力が必要ですが、CRAはそのどちらもが求められます。
それに加えて、
・長距離移動が伴う出張をこなせる「フィジカルの強さ」
も必要となります。つまり、相反する2つのスキルの高さと体力の両方が求められるため「CRAは激務」「CRAはキツい」と言われるのです。
なぜCRAは高いレベルのスキルが求められるのか?
CRAがなぜここまでの高いスキルを求められるのか、それはCRAの仕事が多くの人の命につながる仕事だからです。CRAはスピーディーかつ正確な臨床開発の実施をモニタリングすることが主な仕事で、一日でも早い新薬の承認を目標としています。もちろんこの目標は製薬企業の利益のためでもありますが、病気で苦しんでいる患者さんに少しでも早く新しい有効な薬を届けたいという想いが根底にあってこそのもの。
この目標を達成するためにCRAが最も大切にしなければいけないことは、治験薬の有効性や安全性を示すデータの正確性を担保することです。正確なデータを得るためには、医療機関との円満な関係構築や丁寧で正確な書類作成・逐次報告が欠かせません。
そのため、CRAは「高いコミュニケーション力」「タフなメンタル」「緻密な正確性」「フィジカルの強さ」といったスキルが高いレベルで必要とされるのです。
CRAは激務でも良い点もたくさん
ここまでいかにCRAが激務であるかをご紹介しましたが、CRAとして働く利点についてもご紹介しましょう。
CRAとして働く利点:
他業界に比べてもかなり高い報酬:平均400万円~800万円(リーダー以上の場合は600万円~1,000万円+)
成長中で将来性もある業界であること:CRAは売り手市場であり、未経験者でも十分チャンスがある
他業種より融通が利く:リモートワーク、コアタイムさえ守っていれば出勤時間はいつでもOK、有給休暇が取りやすい、育休制度が充実、服装自由などフレキシブルに働ける
内勤と外勤のバランスが取れている:一週間のスケジュール例で分かるように、CRAは内勤と外勤の両方が発生する職種。そのため、内勤ばかりでオフィスや自宅にこもる仕事が向いていない人、外勤や出張のために外出するのが好きな人、人とのコミュニケーションが好きな人にも向いている職種と言える。
キャリアプランが豊富:外勤が多いCRAから内勤CRA、サポート部署への異動や、CRA以外へのキャリアチェンジの機会が豊富である
CRAは確かに激務な一面もありますが、このように多くの魅力がある職種です。
採用面接では「CRAとしての適性があるかどうか、続けていけるかどうか」は必ず判断される点ですので、上記のようなCRAの激務な部分もきちんと理解しておくことがCRO転職成功のポイントとなります。
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