ブログ記事一覧に戻る
Blog Img

【2025年】MRの転職事情と今後のキャリアの選択肢~専門コンサルタントが詳しく解説!

​MRの数が減少傾向に転じてから久しいですが、一方で近年は大型の求人募集が相次ぐなど非常に活発な領域もあり、決して「MR数の減少=求人数の減少」というわけではありません。

では、2025年のMRの求人動向はどのように予測されているのでしょうか?エイペックスの製薬チームのベテランマネージャーで、セールスポジションを担当する谷口王一さんに、

  • MRの現在の転職事情

  • MRの働き方の変化

  • 企業が求める理想のMR

  • 年代別のキャリアの選択肢

  • MRのキャリア形成

  • CSOでの働き方

  • MR以外のキャリアの選択肢

  • 転職成功のポイント

などについて話を聞きました。今すぐ転職を考えているMRの方、今後のキャリアをゆっくりと考えたい方、両者ともに必読の内容となっています。

※MR(メディカル・リプレゼンタティブ)とは?:日本語で「医薬情報担当者」と訳され、製薬会社に勤めるいわゆる営業職を指します。病院やクリニックの医師・薬剤師などに対し、医薬品の適正使用推進のためにその製剤や治療法の有効性・安全性などの情報を提供することが責務ですが、最終的には自社医薬品の販売拡大につなげることが目的となります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

目次

  1. MRの現在の転職事情

  2. MRの働き方の変化

  3. 今、企業が求める理想のMRとは?

  4. MRのキャリアの選択肢(~40歳前後の場合)

  5. MRのキャリアの選択肢(40代半ば~の場合)

  6. MRのキャリア形成で気をつけたいこと【年代別】

  7. CSOのMRについて

  8. MR以外のキャリアの選択肢

  9. コンサルタントが考えるMRの転職成功のポイント

1. MRの現在の転職事情

Q. 現在のMR数の現状と、その理由を教えてください。

A. 2024年度版「MR白書」によると、2023年のMR数は全体で46,719名であり、10年連続で減少しています。減少幅は2020年に次いで2番目に高い数字(前年度比6%減)で、実際に大手製薬企業でも多くの早期退職の募集がありました。この10年でMR数は約1万8,000名減ったわけですが、今後は落ち着くのかというとその気配は今のところありません。

MR数減少の最大の理由と考えられるのは、製薬企業が負のスパイラルに陥っていることです。新薬パイプラインの縮小に伴う薬剤のコモディティ化や、薬価抑制政策による収益低下で開発費に投資が回らないこと、その開発費も従来の低分子医薬品から希少疾患などへの注力から、遺伝子治療等へのシフトで年々増加傾向にあることが要因です。そこで、開発費捻出のため固定費抑制の必要性が生じ、すぐに効果が出やすい人件費、特にMRの数を減らすという手段が各製薬企業で選ばれています。

Q. MR数は減少傾向ということですが、MRの求人数はどうでしょうか?

A. MR数が減少している一方で、約3社に1社が新卒MRを採用し、約3社に2社が中途採用を行うなど「MR数の減少=求人数の減少ではない」ことは特筆すべき点です。実際にエイペックスでも、2022年から過去最大の求人募集の波が続いています。コロナ禍の反動というべきでしょうか。

これはコロナ禍でMRの訪問規制が始まった際、営業部隊を大きく縮小させようとした製薬会社の見込みが外れたことに起因するかもしれません。製薬企業のなかには、MRのリモート化を進めて固定費(MRの数)を大幅に削減しようとした向きがありましたが、コロナ禍が日本で予想よりも長期化しなかったこと、領域問わず日本のドクターが訪問を好む傾向が見えてきたことから、企業はMRの求人募集を再開せざるを得ず、それが現在でも続いている状況です。

Q. 特に求人募集が増えている領域はありますか?

A. 特に大きな波が来ているのが、免疫・オンコロジー・希少疾患といった領域です。特にここ数年は、米国発のバイオベンチャー・バイオテクノロジー企業の日本事業の立ち上げが続いており、数十名規模の大型募集が相次ぎ転職市場は活況です。こうした企業はパイプラインが非常に豊富で開発予算も巨額であるため、今後も着実な成長が望めるのが大きな魅力でしょう。

こうした新規の求人募集に見られるように活況なこれらの領域ですが、社内でもプライマリーなどからオンコロジーへの大きな領域異動があるなど、これらの領域が今後も製薬企業のプロモーション活動の中心となるのは間違いありません。需要と供給を考えても、糖尿病や循環器などすでに飽和状態の領域よりも、QOLに大きな貢献ができる可能性を秘めたバイオ製剤への投資などに各社が注力するのは当然といえば当然であり、まだ発展の余地と求人の伸びがある分野といえるでしょう。

Q. CSOについては、求人動向はどのようになっていますか?

A. CSO(Contract Sales Organization:医薬品販売業務受託機関)については、引き続きどの企業も多くのMRを必要としていることに変わりはなく、メーカーを早期退職したMRの受け皿になっている状態です。メーカーは固定費抑制のためMR数の削減に努め続け、その代わり販促費としてCSOに営業活動を外部委託するという流れは固定化しつつあり、今後もその流れは変わらないでしょう。

2. MRの働き方の変化

Q. コロナ禍のリモートワークから、MRの働き方はどう変化しましたか?

A. 前述のように、コロナ禍で製薬会社はMRのリモート化を推進しました。Webを実務で多用し在宅勤務が中心だったMRの働き方ですが、現在はコロナ禍前に近い形で落ち着いた印象です。遠方の先生のために講演会のWeb視聴を可能にしたりデジタルを活用することもありますが、基本的には直接施設に行って面会する営業スタイルが求められています。

コロナ禍の採用面接では高いWeb面談スキルによる効率的な営業活動をアピールすることが大切でしたが、現在では以前ほど求めらていません。以前はWeb専任MRの募集もありましたが、今は減少しトレンドは完全に現場に戻った印象です。

訪問スタイルに戻ったMRの働き方ですが、メーカーの場合人員削減によりエリアの改変などが頻回し、一人当たりが担当するエリアが広がっています。空いたエリアをCSOのMRが補っているとはいえ、コロナ禍前に比べて施設間の移動が多くなり拘束時間が長くなっているという傾向が見られます。


3.今、企業が求める理想のMRとは?

Q. 市場価値が高いMRとは、どのような人材でしょうか?

A. 外資系企業についていえば、グローバル本社からのダイバーシティ推進の要請もあり、女性MRが非常に求められているのはここ数年ずっと変化はありません。30代までであれば、プライマリー領域の経験のみでも積極的にスペシャリティ領域などに登用してくれる企業は多くあります。

ただし、コロナ禍であれば転勤NGでも採用されていた傾向に変化が見られます。前述のようにメーカーの人員不足やWeb面談の減少により、赴任地固定を希望される女性MRは以前に比べ合格率が下がっているように感じます。

女性MRが優遇される点以外では、領域経験が最も重要視される傾向はずっと変わりません。年齢問わず、希少疾患やCNS、オンコロジー、ヘマトロジーなどスペシャリティの経験があると市場価値も高く、大きなチャンスが巡ってきます。大学病院や基幹病院の担当経験も問われますので、しっかりと実績を作っておくことが大切です。

4.MRのキャリアの選択肢(~40歳前後の場合)

Q. 40歳前後まででスペシャリティ領域未経験の場合、どのようなキャリアの選択肢がありますか?

A. まず、MRのような営業職は若手であるほど採用の確率が高くなる傾向にあります。40歳前後が「未経験OK」「未経験NG」のひとつの目安となりますが、この年代までであれば、大学病院・基幹病院の経験とMRとしての能力の高さが証明できれば、応募先で担当する領域の経験がなくてもメーカーへの転職が可能なケースが多く見られます。


Q. オンコロジー領域未経験でも採用のチャンスはありますか?

A. 2024年は、弊社でも過去10年で最もオンコロジー領域の求人募集が多かった年です。米国発のバイオベンチャー・バイオテクノロジー企業がスタートアップMRを採用するため、数十名規模の大型募集が続きましたが、多くの企業が「領域未経験OK」で採用を行いました。

これは、組織内で経験の偏りがないようにオンコロジー未経験者でも積極的に採用を行う動きが各社にあるためです。年収も~1,200万円から1,300万円くらいのことが多く、経験値の面でも報酬の面でも大きなキャリアアップが見込める転職といえます。

オンコロジーは新しい治療法や領域の奥深さについて学ぶ面白さもあると同時に、バイオテクノロジー分野では大手にない経営陣との近さも魅力です。今後も適応症拡大等を控え求人数増加の波は続くと考えられますので、チャンスがあればぜひ積極的にチャレンジしましょう。

ただし未経験者の場合、大都市圏など勤務地にこだわると採用の確率が低くなってしまいます。オンコロジー領域に挑戦し、MRとして充実したキャリアを構築することを優先したいという場合は、売上目標が相対的に低い大都市圏以外の赴任地も考慮に入れましょう。そうすることで、未経験者でも採用の可能性が高まります。


Q. 勤務地を固定したい場合、どんな選択肢がありますか?

A. 若手であれば、オンコロジーなど大きな成長が見込める領域への異動がキャリアアップのチャンスにつながりやすいといえますが、一方で勤務地をある程度固定したいという20代、30代の方にも多くお会いします。

メーカー勤務の場合どうしても転勤の可能性が出てくるため、その場合は勤務地の融通が利きやすいCSOへ転職が選択肢となるでしょう。以前は40代、50代の方が多かったCSOへの転職ですが、近年は若手MRの方も数多くCSOを選ばれるようになりました。

CSOはメーカーよりも管理職や本社への異動などを叶えられる確率が高いため、若手にとってはメーカーよりもキャリアのチャンスが多い職場かもしれません。勤務地固定だけでなく、さまざまな領域を経験してキャリアの幅を広げたい、早期にキャリアアップしたいというモチベーションの高い方も、CSOを希望されるケースが多くみられます。

メーカーの選択肢としては、大口の顧客が大都市圏に集中しているような美容医療領域などは、東京や大阪限定でMRを募集することがあります。ただ、候補者の選定については非常にシビアな面があるため、双方の興味とマッチングが大切になってきます。


今後のキャリアの選択肢についてエイペックスのコンサルタントに相談する

5.MRのキャリアの選択肢(40代半ば~の場合)

Q. 40歳半ば以降でスペシャリティ領域未経験の場合、どのようなキャリアの選択肢がありますか?

A. 40代中盤以上の方で応募する領域の経験がない場合、メーカーへの転職は大変厳しくなります。40代半ば〜50代の方であれば、CSOへの転職が最も多いケースとなります。

CSOは社員のキャリア成長に大変力を注いでいる企業で、各社独自のオンコロジー・スペシャリティMRを育成するプログラムがある他、スキルアップ、コンプライアンス、学術研修など多彩な人材育成プログラムが提供されるのもCSOの魅力の一つです。

近年メーカーからの受注が増えていることもあってプロジェクトの数や種類も多く、40代半ば以降の方でも今後のキャリア成長が見込める選択肢となります。勤務地についてもトップダウンで決定されることはほとんどなく、できる限り希望を考慮してくれるでしょう。


Q. 領域経験者の場合は、40代でもメーカーへの転職は可能ですか?

A. 担当する領域の経験があるのであれば、40代でも経験を活かしてメーカーへの転職が可能です。前述のように、スタートアップMRなど大型募集の際には経験者と未経験者両方を採用する傾向があり、ベテラン層の経験者についても積極的に採用を行います。転職エージェントなどの力を借りて、常に転職市場にアンテナを張って良い案件を逃さないようにするのが、転職成功のコツとなるでしょう。

6.MRのキャリア形成で気をつけたいこと【年代別】

Q. これからのMRは、どのようなキャリアを形成すべきでしょうか?(20代~30代前半の場合)

A. 20代など若手MRの方で今後もMRとしてキャリアアップの意欲があるということであれば、オンコロジーやヘマトロジー、スペシャリティ、バイオ製剤などこれからメーカーが注力する領域に携わるチャンスがあれば、どんどんチャレンジしていくべきです。こうした領域で大学病院・基幹病院を担当しMRとしての実績を上げていけば、その後の競争倍率が高い転職や管理職への道も開け、充実したキャリアを送れる可能性が高まります。


Q. これからのMRは、どのようなキャリアを形成すべきでしょうか?(30代半ば~40歳前後の場合)

A. 30代の中堅の方であっても、MRとしての市場価値を高める選択肢を常に考えて行動しましょう。スペシャリティやオンコロジーの経験、大学病院・基幹病院の経験、新薬ローンチ、ピープルマネジメント、プロジェクトのリーダー経験を積むチャンスがあれば、時には勤務地に柔軟性を持たせたり割増退職金を期待せずチャレンジすることが大切です。

そのためには日頃から、「どんなロジック/手法で」「どのくらい」「どんなふうに周りを巻き込んで」MRとしての実績を積んできたのかが説明できるよう準備を怠らないようにしましょう。頼れる人材コンサルタントを味方につけ、市場情報が常にアップデートされている状態にしておくと、チャンスを見逃すことなく良い機会に巡り合うことができます。


Q. これからのMRは、どのようなキャリアを形成すべきでしょうか?(40歳前後~の場合)

A. 40歳前後以上のベテランの方であれば、領域経験やMRとしての実績以外で企業が期待しているのはピープルマネジメントに関するスキルです。

外資系メーカーや日系のスタートアップ企業が不定期に営業管理職を募集することがあり、優れた営業実績や部下の採用~指導・トレーニング実績、営業企画・計画策定能力、対人スキル、ときにはグローバルとのコミュニケーション能力を持つ人材を求めていることがあります。社内での昇進が期待できない場合には、人材コンサルタントと定期的に連絡を保ち、新規案件のチャンスを逃さないようにしておくことが重要です。

また、若手・ベテラン問わずCSOへの転職もお勧めです。エリアをある程度固定して勤務できること、人材育成制度がしっかりしていてオンコロジーなどの領域にもチャレンジできること、メーカーよりも多彩なキャリアプランがあることなどが魅力で、製薬企業がCSOにMR活動を委託する時代の波もあり、プロジェクトもとても豊富です。40代の方であれば正社員としての採用に間に合いますので、ぜひキャリアの選択肢の一つとして考えてみても良いかと思います。

7.CSOのMRについて

Q. メーカーMRとCSOMRでは仕事内容に違いはありますか?

A. メーカーでもCSOでも仕事内容に違いはありません。以前はリモートMRという選択肢もありましたが、現在はメーカーと変わらず医療機関へ直接訪問する営業活動が主流です。メーカーMRと協働しながらしっかりとドクターにディテーリングを行い、処方数や採用施設数に貢献することがミッションとなります。担当施設はクリニックが中心となりますが、プロジェクトによっては大学病院や基幹病院も担当したり、新薬ローンチに携わったりするチャンスも多く、多彩なキャリアを築くことができます。

大手CSOのほうがプロジェクトの数は豊富ですので、多くの選択肢を求めるのであれば大手がお勧めです。また、オンコロジーなどに特化した事業を行っているCSOもありますので、自身の志向に合わせて応募先を決めると良いでしょう。

Q. メーカーとの働き方の違いはありますか?

A. メーカーとの働き方の大きな違いは、CSOはプロジェクトごとに担当製品が変わるという点です。これを「面倒」と捉えるか、「いろいろな製品に携われて楽しい」「いつ仕事がなくなるかといった不安がなくて良い」と考えるのかは自分次第で、どちらも一長一短でしょう。

また、CSOは内勤が多いということはよく聞きます。レポート先が担当メーカーとCSOの上長両方であるため、内勤は多く発生するでしょう。ただ、仮にこの点をふまえても、早期退職のない会社でMRというせっかくの仕事を継続できること、自分の頑張りが会社の売上に貢献し、それがまた報酬として返ってくる循環を考えれば、CSOは魅力的な選択肢といえると思います。

今後もメーカーのMR数削減の波は続くことが予想されますので、早期退職後の年収ダウンを考えれば、今の内からCSOでしっかりとキャリアを積んでいくほうが生涯年収はCSOのほうが良いということも考えられます。

Q. メーカーからCSOへの転職で給与はどのように変化しますか?

A. 一般的にCSOは製薬企業よりも給与水準が低いと思われがちですが、CSOの活用はグローバルのトレンドであり、製薬企業からのMR活動の委託に対応するためには自社のMRを十分に確保しなければならず、各社給与水準が上がるよう努めている最中です。若手の場合はもともとの給与水準が低いため、製薬企業からCSOへの転職で年収が上がるケースも多いです。


Q. メーカーとの福利厚生や手当の違いはありますか?

A. 相対的に見れば、メーカーのほうがCSOよりも福利厚生や手当は手厚いといえます。手当については大手・中小など企業によって異なりますが、概ねCSOでも外勤日当等はメーカーと同じように支給される場合が多いでしょう。

住宅手当や単身赴任手当に関しては、年収に込みとしている企業と支給されるところに分かれ、その場合でも負担額は企業により違います。退職金についても企業により違いがあります。インセンティブ・ボーナスについては、メーカーと同じようにきちんと支給がありますので安心してください。

人材コンサルタントにCSOでの働き方について詳しく聞く

Q. CSOでは本当に転勤がないのでしょうか?

A. 転勤の頻度については、メーカーよりもCSOのほうが融通が利くのが一般的です。メーカーの場合は以前よりも組織再編の頻度が高まっていることもあり、常に勤務地変更の可能性が伴います。

一方、CSOの場合は自身の「優先度」に重きを置いてくれる企業文化を持っていますので、勤務地を固定したいというのが第一優先であればトップダウンで転勤を命じられるということはなく、話し合いながら希望を考慮してくれるでしょう。


Q. CSOではプロジェクト待ちの状態が発生しますか?

A. CSOでは近年メーカーからの受注が増えていることもあり、プロジェクトの待機時間があることはほとんどありません。待機時間が発生しても給与はきちんと支払われますので、プロジェクトの空きがないようアサインされることがほとんどです。次のプロジェクトについても、アサイン前に上長がしっかりと相談に乗ってくれますので、CSOは安心感があるとよく聞きます。


Q. プロジェクト先での転籍は可能ですか?

A. プロジェクトによりますが、メーカーへの転籍は可能なケースもあります。将来的にメーカーへの転職を考えている場合には、上長と相談しながらキャリア形成を考えていくと良いでしょう。

Q. CSOに転職するための条件は何ですか?

A. 20代であっても50代であっても、年齢に関係なくCSOへの転職は可能です。特定の領域や大学病院・基幹病院の経験が必須ということもありません。それよりも、顧客であるメーカーのMRや上司と協働できる対人スキルや人間性、その先にいるドクターとの面談能力が大切です。領域としてはパイの大きい循環器・糖尿病・呼吸器疾患等を担当することが多いのですが、経験が浅い場合は研修などを受けながら自己研鑽する意欲が必要とされるでしょう。

Q. CSOの「先行採用」について教えてください。

A. メーカーの早期退職の申込みを予定している場合、CSOは「先行採用」という特殊なオファーを出してくれることがあります。

早期退職では退職日は数カ月先となることがほとんどで、退職日に従って転職先の入社タイミングを決めるのは非常に困難です。退職後に転職活動を始めるとブランクができて転職先がなかなか見つけられず、逆に早期退職に手を挙げてから運良く倍率の高い製薬メーカーで内定を獲得できても、数ヶ月先まで待ってくれることはなく内定を諦めなければならないケースもでてきます。

企業にもよりますが、CSOの場合はこの「先行採用」で入社を待ってくれるという大きなメリットがあり、次の仕事があるということで家族を安心させられる点、割増退職金も不安なく受け取れる点が非常に大きいといえます。

Q. CSOで働く魅力を教えてください。

A. CSOの大きな魅力を挙げると、以下の4つになります。

・経験できる領域の広さ

・人材育成の文化

・豊富なキャリアの選択肢

・長期的なキャリア構築が可能

①経験できる領域の広さ:CSOでは、特定の領域に長く携わる傾向のあるメーカーに比べ、多彩な領域・製品経験を積むことができるため、MRとしての自身のスキルを伸ばしたい方には最適な環境といえるでしょう。各社の製品の特徴をよく知っているので、​ドクターからの信頼も得やすいとよく聞きます。

②人材育成の文化:「製品」で価値が決まるメーカーと違い、CSOの価値は「人材」にあると考えられており、人材育成に大きな投資をしています。上長は、MRそれぞれの志向や働き方の希望を最大限考慮してプロジェクトとのマッチングを行うよう努めており、人材を大切にする企業文化が反映されています。

③豊富なキャリアの選択肢:CSOはメーカーよりもキャリアの選択肢が多く、MRとしての専門性を磨きたいのか、管理職としてキャリアアップを目指したいのか、MRからのキャリアチェンジを目指したいのかなど、個々のキャリアプランを見据えながらは働くことが可能です。

特に中堅~大手CSOではCSO事業以外にもさまざまなプロジェクトを有しており、MR以外の選択肢も数多くあります。管理職を目指したい場合でも、人員が削減されているメーカーよりもはるかにチャンスがあり、エリアマネージャー(派遣元の製薬会社の営業所長とのコミュニケーションが多い)やプロジェクトマネージャー(派遣元の本社とのコミュニケーションが多い)を目指す選択肢が考えられます。

④長期的なキャリア構築が可能:パイプラインの好不調に左右されないCSOの方が、長期的にキャリアを形成しやすい点も魅力の一つです。上記の管理職に関しても、メーカーなら30代半ばまでがチャンスであっても、CSOでは40代でも十分にチャレンジが可能です。

8.MR以外のキャリアの選択肢

Q. MR以外で、製薬業界で他にキャリアの選択肢はありますか?

A. 若手MRで同じ製薬業界で他職種への転職を考える場合、MRよりも年収は下がりますがCROでのCRA(臨床開発モニター)PMS(Post Marketing Surveillance)モニターなどが考えられます。CRAはドクターや医療従事者とのコミュニケーションが多く発生する職種のため、MRとして身につけた対人スキルや現場経験を活かせる職種です。

CRAもPMSモニターも、中級程度の英語力を身につけておくと合格の確率が高まりますので、しっかりと学習しておくようにしましょう。


Q. ベテランMRの場合は、製薬業界内で他職種の選択肢はありますか?

A. オンコロジーなどで豊富な経験を持つベテランMRであれば、非常に稀なケースですがメーカーでもMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)KAM(キー・アカウント・マネージャー) に応募可能なことがあります。

KAMは、大手グローバルメーカーから日系のスタートアップまで近年多くの企業が募集を行っており、企業によって役割は異なりますが「MSL」「マーケティング」「営業」を混ぜたような幅広い役割を担うことが多い職種です。ただ、ターゲット施設が少なかったり治療法の認知度向上が大切なことも多く、MSLやマーケティングの応募者と競わなければならないため、高いレベルでの対人スキルや分析力、論理的で学術的な説明力が求められます。


Q. ヘルスケア業界では、MR以外にキャリアの選択肢はありますか?

A. ヘルスケア周りでの異業種転職ということであれば、稀にですが医療機器や検査会社、ライフサイエンス、ヘルステック(IT×ヘルスケア)などのヘルスケア関連企業での営業職で、MRからのキャリアチェンジを受け付けているところがあります。経験領域がマッチすれば、50代近い方でも採用実績があります。

ただ、ディテーリングに特化した独特の営業活動を行うMRにとって、医療機器会社などでのいわゆる価格交渉を含めた一般的な営業活動は相容れないことが多く、思っていた内容と違うということもあるため転職活動は慎重に行うことをお勧めします。


Q. MRが異業種・異職種への転職を考える場合、気をつけることはありますか?

A. MRから異業種・異職種に転職を希望する場合、目安は30代半ばまででしょう。MRは他業界と比べると年収が高いため、年齢が高くなるほど転職による年収ダウンの幅が広がり決断に影響を与えます。

上記の異業種以外でも、ヘルスケア・製薬に特化した人材紹介会社や広告代理店などでの営業職もMR経験者を受け付けることがありますが、経験あるなしに関わらず大半は年収ダウンでの転職となります。異業種・異職種への転職を考える際には、転職後の家庭内の収支を計算し、十分に考慮してから決定するようにしましょう。

9. コンサルタントが考えるMRの転職成功のポイント

A. 近年はメーカーでの早期退職制度を利用して転職を希望される方が非常に多く、同じ時期に同じメーカーMRの方が転職活動をしている状態がよく見られます。もし将来的に転職を考えているのであれば、上乗せの退職金に関係なく早くから転職エージェントとコンタクトを取り動いておくことが大切です。魅力的な求人は一年間ずっと市場にあるわけではなく、しかも大規模な退職者が出る時期に皆と一緒に動いては、自身の経験を活かせる理想のキャリアをつかむことは難しいと考えましょう。

エイペックスでは、採用面接に向けてもしっかりと客観的なアドバイスを候補者の方に提供しています。エージェントは、面接に向けてどんな姿勢でどんな準備をすれば内定獲得につながるのか、熟知しています。プロからのアドバイスを真摯に受け止め準備を怠らず、それを面接で実践できるよう練習しましょう。面接はかなり深いところまでMRとしての姿勢や実績の作り方、成功談・失敗談、同僚の巻き込み方などを聞かれますので、面接官に熱意を見せるためにも戦略的にしっかりと準備をして臨むことが大切です。

谷口 王一:製薬チームのベテランマネージャーで、ヘルスケア業界のセールスポジションを主に担当している。人材ビジネスに25年近く携わっており、特に大手外資系製薬企業、バイオベンチャー、大手CSOなどの採用担当者と強固なパイプラインを有する。求職者の気持ちに寄り添った丁寧できめ細かいキャリア相談に定評があり、特に多くのMRから大きな信頼を寄せられている。

エイペックスでキャリア面談を申し込む

最新の転職市場の動向など、

転職・人材に関するブログ記事はこちら