これまで日本の雇用制度は、総合職を代表とする会社の基準に合わせた新卒一括採用によるメンバーシップ型雇用が一般的でした。ところが、コロナ禍によりテレワーク・リモートワークが急速に浸透した今、採用企業側も新卒・中途問わず「即戦力」を求めるようになり、大手企業の中でも「人ありき」ではなく「スキルありき」のジョブ型雇用に転換する動きが加速しています。
ジョブ型雇用が加速する?
ジョブ型雇用とは、企業が求める職務内容に対して応募する雇用形態で、自身が保持しているスキルがその職務にマッチすることで採用に至ります。企業側としては雇用のミスマッチを防ぐことができる一方、雇用される側も専門知識をフルに活かすことが出来るうえ更なるスキルアップも図れ、良いことづくめです。
2017年から始まった働き方改革は遅々として進んでいない印象でしたが、コロナ禍の影響でリモートワークなど働き方の多様化が加速する中、大手企業をはじめ多くの企業がジョブ型雇用への転換を試みています。
欧米では既にこの雇用形態が一般的であり、採用面接の際に今までの経験や培ってきたスキルに対して、「今後この企業で、これだけの成果を上げようと思っている。さて、いくらで私のスキルを買いますか?」というスタンスで臨むことが多いといわれています。つまり採用競争に勝つため、どれだけ色々な経験をして仕事を得るか、給与を上げてもらえる糧を作るかが、自身の生活の安定やスキルを高める唯一の手段というわけです。
まだまだ日本型の採用はなくならない?
それに対し、日本従来の新卒一括採用に代表されるメンバーシップ型雇用は、職種を特定せず入社後の教育で適性を決める採用方法です。恐らく半年前までは、日本企業では主流の雇用形態でした。むしろ少子高齢化や労働人口不足から慢性的な人手不足に陥っている業界は、多少経験不足でも積極的に人材を採用していました。
ところがこのコロナ禍の影響で、採用企業は以下のような点で苦慮しています。
・在宅勤務の従業員をどうやって管理・評価したらいいのか。
・今の状況では、何が正しく、何が不足しているのかも判断が難しい。
・業績が下がってしまったため、立て直すのに時間がかかり中途採用は一旦ストップ。
・社員のほとんどがテレワークだから、中途採用してもOJTができる状況にない。
中途採用を一旦止めている企業が抱える問題は、多かれ少なかれこのようなところでしょうか。
では、採用企業側の本音は何でしょうか?
・わざわざ教えなくても、この業務ができる人が欲しい。
・リサーチしている時間がないから、この業務を新たに切り開ける人がいてくれたら助かる。
・OJTの場を提供できないので、持っているスキルでこの部分の穴を埋めてほしい。
これまでの協調性やコミュニケーション力などの「人ありき」で判断していた採用の背景には、様々な業務の経験を踏んで総合職として会社を支えてほしいという思いがあったからです。ところが、現状はとにかく業務に紐づくスキルを持っている人が欲しい、そこにプラスオンでコミュニケーション力や協調性があったら、尚よし…なのではないでしょうか。日本従来の雇用形態は、今後縮小することはあっても拡大していくことはないでしょう。
まとめ
特に20代の方は、自分が推せるスキルや経験を持つことが今後求められてきます。学生はインターンシップに参加するのも良いでしょう。よく採用面接の際に、どのようなことをしたいですか?という問いに対し、「何でもやります」「自分自身のスキルアップを図りたいです」という方がいますが、これでは勝てません。
また、様々な働き方をする人材を受け入る「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性とその包括)」も、日本企業で推進されるようになってきました。見た目のやる気や残業の多さではなく、仕事そのものの成果が問われる時代です。自身の強みは何なのか、今一度問い直しながら自身のキャリア形成に役立てましょう。