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MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)求人50件から見る仕事内容とキャリアパス

​「MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)」は、製薬会社と医療従事者の架け橋として重要な役割を果たしながら、最前線で疾患領域の成長に貢献できるやりがいのある専門職です。高度な医学知識と優れたコミュニケーション能力を活かし、最新の医療情報を収集・提供しながら薬剤価値の最大化によって患者さんに貢献できるこの職種は、メディカル分野でのキャリアアップを目指す方々にとって魅力的な選択肢の一つです。

しかし、MSLの具体的な仕事内容や必要なスキル、キャリアパスについて詳しく知る機会は限られており、転職を考える上で不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

エイペックスは業界トップクラスの製薬チームを擁し、公開・非公開含めてMSL求人を多数取り扱っています。本記事では、約50件の最新MSL求人を分析したデータをもとに、以下の点について詳しく解説します:

  • MSLの具体的な仕事内容や他職種との違い、やりがい

  • MSLに求められるスキルと適性

  • MSLのキャリアパスと年収

MSLへの転職によって医療の最前線で活躍したい方、専門知識を活かしたキャリアを築きたい方は、ぜひ最後までお読みください。

▼外資系製薬業界全般の転職情報について検討中の方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

【外資系製薬会社への転職を考えている方へ】企業の特徴や求められるスキルを紹介!

目次

  • MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)とは?

  • MSLとMRの違い

  • MSLと学術の違い

  • MSLが注目されている理由と将来性

  • MSLの仕事内容

  • MSLのやりがい

  • MSLの年収

  • MSLとして働く上で求められるスキル

  • MSLに向いている人

  • MSLの将来的なキャリアパス

  • データで見るMSL

  • MSLへの転職を成功させた例

  • MSLに転職する際のQ&A

  • MSLへの転職はエイペックスへご相談下さい

MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)とは?

MSL(Medical Science Liaison/メディカル・サイエンス・リエゾン)とは、製薬企業などにおいて高度な医学・薬学・科学的知識を駆使し、医療従事者と対等な立場での意見交換を通じてアンメットメディカルニーズや見識を収集し、研究開発などに役立て医薬品の価値最大化に貢献する仕事です。主に、製薬企業のメディカルアフェアーズ(MA)部門に所属しており、医学会と企業のサイエンティフィックな架け橋となる重要な職種です。

ほとんどの場合MSLは担当領域ごとに分かれており、領域ごとの最新の医薬品情報や治療法、疾患情報を中立的かつ科学的な立場から医療従事者に発信・提供することが大きな役割です。 KOL(キー・オピニオン・リーダー)やTL(ソートリーダー)、KEE(キー・エクスターナル・エキスパート)と呼ばれる社外専門家や研究者との科学的交流を通じ、アンメットメディカルニーズを調査・把握したり、データの解釈や不足データ等についてインサイトを収集したりして今後の研究開発・育薬に活かしたりします。

そのほかにも、臨床開発部門と連携しながらの研究活動や論文作成・発表のサポート、製品価値最大化のためのメディカル戦略の立案とメディカルプランの作成、講演会開催のサポート、医療従事者からの問い合わせ窓口としての活動など、活動範囲は多岐に渡ります。

製薬企業としてこうした活動を通じ、新たなエビデンス創出など自社製品の価値を最大化させることによって医療の質向上に貢献すると同時に、業界における科学的リーダーとしてのプレゼンスを高めることもMSLの業務の特徴といえるでしょう。

MSLとMRの違い

新卒やこれから製薬業界を目指す方であれば、MR( Medical Representative/メディカル・リプレゼンタティブ)とMSLの違いがはっきりしないという方もいるのではないでしょうか。

MSLとMRは、ともに医療現場に情報を提供する役割を担いますが、MRは「プロモーション」、MSLは「ノンプロモーション」の情報を提供することに大きな違いがあります。

MRの活動の大きな目的は、医薬品の適正使用の推進による自社医薬品の販売促進であり、医療従事者に対し発売中の製品の説明会を行ったり、適応疾患の情報を伝えて疾患に対する啓発活動を行い、処方の裾野を広げるのが仕事です。

一方MSLは、MRのような販売活動とは一線を画していなければならず、あくまで中立的な立場から科学的・医学的な情報提供活動を行います。こうした科学的交流からアンメットメディカルニーズを充足させるためのエビデンスを創出し、薬剤価値を最適化させて医療の質向上・発展に寄与するのが目的です。

MSLと学術の違い

製薬業界にはMSLと同様に、高度な科学的専門知識を持ち医療従事者の問い合わせに答える学術・DI(ドラッグインフォメーション)という職種があります。

MSLと学術の違いは、所属部署とその役割にあります。ほとんどの場合、MSLが本社のメディカルアフェアーズ部門に所属するのに対し、学術は営業部門やカスタマーケア部門、研修部門などに所属していることが多くあります。

製薬企業のサイエンティフィックな活動がMA部門に集約されたことにともない、近年学術の求人は減少傾向にあります。医療従事者からの問い合わせ窓口を一本化する企業も多く、DIセンター、コールセンターとして業務を行う学術担当者もいます。このような問い合わせ業務をCRO(医薬品開発業務委託期間)・CSOなどに委託する製薬企業も多く存在します。また企業によりますが、学術が行っていたMRに対しての製品・疾患教育・研修については、研修部が担当していることもあります。

学術もMSLも医療従事者に対し、医薬品の適切使用のための学術情報を提供することは同じですが、MSLはそこからインサイトを収集し、今後の研究開発に役立てることをミッションとしている点が大きな違いです。

MSLが注目されている理由と将来性

メディカルアフェアーズは欧米ではかなり以前から製薬会社に設置されていた部門ですが、日本では企業の臨床研究に関する不正事件の反省から、研究活動と販売活動の明確な線引きとして2010年台から多くの製薬企業でMA部門、MSL職が誕生するようになりました。

こうした背景もあり、製薬業界は近年患者中心の医療(Patient Centricity)が強調されています。中立的で科学的な立場からの社外専門家との活発な交流により医薬品の適正使用が推進され、最終的に患者さんへ最適な医療を届けることが期待できるため、MSLの役割は非常に大きなものといえます。

比較的新しいポジションであるMSLですが、まだ新卒や医療従事者の間でも十分に認知されている職種というわけではありません。一方で、外資系・内資系企業、メーカー・CRO問わずMA部門は急速に拡大しており、求人募集も多く企業は常に優秀なMSLを求めている状態です。MSLは企業のサイエンティフィックな顔となるため採用のハードルは高く、疾患領域における高い専門知識はもちろん、優れたコミュニケーションスキルや英語力も必須となっています。

MSLの仕事内容

MSLの主な仕事内容として、具体的には以下のような業務が挙げられます。

最新の医療情報の収集・発信

MSLの重要な業務の一つが、最新の学術情報の収集・精査と発信です。国内外の学会等への参加、論文調査、社外専門家との情報交換を通じて担当領域の最新知見を深め、アンメットメディカルニーズやクリニカルクエスチョン、メディカルインサイトなど収集した情報を精査し、研究開発や臨床開発部門など社内関係者への共有やKOLとのディスカッションなどに活用します。

さらに、学会でのランチョンセミナーや自社主催・共催の講演会、セミナー、メディカルアドバイザリーボードなどの企画・運営を行い、最新の医学情報を発信するための活動も行います。

KOL(Key Opinion Leader)の特定・育成・関係構築

医療情報の収集・発信にともなう大切な職務の一つが、KOLの特定と育成、および関係構築です。KOLとの関係構築は戦略的に行われるため、エンゲージメントプラン等を作成して担当領域のKOLを特定し、アドバイザリーボードへの参加や自社セミナー等のスピーカーとして育成し、自社との科学的交流を促進します。

また、定期的にKOLを訪問し、面談を通じて関係を構築しながらインサイトを収集します。そこからアンメットメディカルニーズやエビデンスギャップを特定したり、より安全性・有効性の高い薬剤開発や育薬等へのヒントとすることで良好で建設的・長期的な関係を構築します。

臨床開発やHEORへの協力による研究活動の推進・エビデンス創出   

自社の開発部門と連携し、クリニカルクエスチョンに対し科学的な回答を導き出すため、自社主催の臨床試験やアカデミアとの共同研究に参加し、臨床研究の推進や治験データの解析などを行い開発に貢献することもMSLの仕事の一つです。

科学的洞察による治験参加施設の特定への協力から、治験責任医師との窓口として医師とのコミュニケーションや話し合いのリード、医学的見解の提供、試験管理やモニタリングのサポートを行います。構築したエビデンスに基づいてパブリケーション(論文化)のプランニングや準備、学会発表を行ったりもします。

また、医療技術やサービスの効果に関わる経済的側面を統計学的に研究するHEOR(ヘルスケアエコノミクス・アウトカムリサーチ)に関与することで、新たなエビデンス創出に貢献することも職務の一つになることもあります。

また、MSLが所属するメディカルアフェアーズ部門は、MSLの機能のほか以下のような多種多様な機能が存在します。
各企業によってそれぞれグループ分けしていたり、MSLが多くの業務を兼任したりと業務範囲はさまざまです。呼称も企業により異なりますので、求人票や転職エージェントに確認すると良いでしょう。

  • メディカルエデュケーション:MRへの教育・トレーニングや、自社講演会など医療従事者向けのエデュケーションプランニング等をリードする

  • メディカルストラテジー:医薬品の価値最大化・育薬に向けたメディカルストラテジーの立案、実行のためのメディカルプランの作成、エビデンスの創出・構築を担当

  • メディカルインフォメーション:製品の非宣伝用資材の作成やプロモーション資材のレビューを担当

  • ドラッグインフォメーション:医薬品適正使用のための医療従事者からの問い合わせ窓口

このほかにも、RWE(リアルワールドエビデンス)を担う役職やHEORの戦略策定ポジション、患者団体との関係構築を主とした目的とするペイシェントアドボカシーがMA部門に設置されている企業もあります。

MSLのやりがい

MSLは製薬企業の成長にとってもはやなくてはならない存在となっており、大変やりがいのある仕事です。

高度な薬学や医学の知識を活用した活躍の場は製薬企業に多くありますが、そのなかでもKOLと対等な立場でディスカッションできる機会が多いこと、さまざまな部署との協働が多くコミュニケーションスキルが活かせること、アンメットメディカルニーズを特定することで患者さんへの貢献やその領域の医療の発展を実感できることなどをやりがいと感じられる職業です。 また日進月歩の医療分野で常に最新知識に触れることで、製薬企業を代表する科学的リエゾンとして活躍が期待できます。

MSLは職種自体が比較的新しいため、自主性を持って業務を設計したり、自身の得意分野を活かして柔軟にキャリアを築けるのもやりがいの一つです。
ただし他の職種同様に、薬機法・臨床研究法等の法規制や販売情報提供活動等ガイドラインを遵守したコンプライアンスへの高い意識、高い倫理観・道徳観、エビデンスベースの中立的活動、患者中心主義によるバリューベースヘルスケアへの理解、自己研鑽への意欲など、MSLは大きな影響力を持つ分、多くの責任を求められるポジションであることを認識しておく必要があります。

MSLの年収

MSLの年収は経験・専門性・前職など個人の資質のほか、外資系か内資系か、大企業か中小企業かなどによって大きく異なります。新卒入社の場合は、通常その企業の給与体系に沿った年収となりますが、中途採用の場合はより変動が大きくなります。

特に担当領域で論文投稿や学会発表などの実績がある場合や、ポストドクターなど研究経験者の転職では高度な専門性が評価され、高い年収で採用される可能性が高くなります。一方でMRなど他職種からの未経験転職の場合は、年収が下がる可能性もあります。

下記は、製薬企業が募集するMSLの年収分布図です(エイペックス調べ)。ご自身の経験や経歴ではどの程度の年収が予想されるのか、迷ったときはぜひエイペックスへご相談下さい。

製薬企業が募集するMSLの年収分布図

人材コンサルタントにMSLへ転職する際の年収について相談する

MSLとして働く上で求められるスキル

病院で医者と話すスーツ姿の日本人男性

MSLには医学的な専門知識に加え、KOLと信頼関係を築くためのコミュニケーションスキルや語学力も幅広く求められます。

高度な専門知識

担当する疾患領域における医学的・科学的・薬学的な深い専門知識が欠かせないため、何らかの理系学士取得者が最も適当です。KOLとの科学的ディスカッションや、文献・臨床データの解釈が可能であること、新たな知見を提供する立場にあるため常に最新の医学・薬学情報を学び続ける自己研鑽への意欲を持っていることが不可欠です。

医療系資格や医学・薬学・生命科学分野の博士号は歓迎されることが多く、特にオンコロジーやヘマトロジー領域などでは専門知識が重視されます。また各種法規制・ガイドライン、コンプライアンスを遵守する倫理観の高さが求められる一方、ビジネス目標や商業的なインパクトについても理解が必要です。

コミュニケーション能力

業界の最前線に立つ研究者や臨床医と頻繁に議論し、長期的で強固な信頼関係を構築しなければならないMSLにとって、高度なコミュニケーション能力は必要不可欠です。相手の興味・関心や潜在的なニーズを察知する洞察力、的確な質問力、傾聴力、高い情報収集能力、そして複雑な医学・科学情報を分かりやすく説明する能力などが含まれます。

また、社内の異なる部門や経営陣、規制当局、海外の担当者との協業に必要な調整力・交渉力も欠かせないスキルといえるでしょう。

語学力

MSLには高度な語学力、特に英語力が求められます。

最新の医学研究のほとんどは英語で発表されるため、専門的な英語論文を読解できるレベルの語学力を持ち、さらに海外の担当者とのプレゼンテーションや議論の機会も多いため、読解力だけでなく、話す・聞くなどの総合的な英語力を身につけている必要があります。 ビジネスレベルの英語コミュニケーション能力TOEICなどの語学試験のスコアは、MSLとしての評価や採用にも大きく影響します。

以下は製薬企業がMSLに求める英語力のレベルですが、外資系企業などグローバルの担当者との会話でのコミュニケーションがどれくらい必要かによって、ビジネスレベルが必要なのか、日常会話レベルで良いのかが変わる傾向にあります。

製薬企業がMSLに求める英語力のレベル

MSLに向いている人

MSLに向いているのは医学・科学分野に対する深い興味と、常に新しい知識を吸収しようとする強い学習意欲を持つ方です。担当領域への精通は必要な場合とそうでない場合がありますが、医学的見識だけでなく臨床開発を含む医薬品の開発、規制、商業化プロセスなどについても積極的に学ぶ姿勢が必要です。最新の医学情報を適切に収集し分析する能力が求められるため、ディテール志向で論理的な情報リテラシーを持つ方が求められます。

またKOLとの信頼関係構築が重要な職務であるため、優れたコミュニケーション能力と対人スキルを持つ人に向いています。社内外問わずさまざまなステークホルダーとの協働が必要なポジションのため、一過性でなく長期的な信頼関係を築き、人脈ネットワークを広げられるような人が好まれるでしょう。

さらにMSLの業務は独立性が高く様々な法規制・ガイドラインを遵守する必要があるため、高い倫理観と自己管理能力、自主性を持つ人が適しています。

MSLの将来的なキャリアパス

MSLは比較的新しい職種であるため、従来の製薬業界のキャリアパスとは異なり、個人の経験・スキル・興味に応じて幅広くキャリアを展開できる可能性を秘めています。

たとえば、MSLとしての専門性を深めて新たな治療領域にチャレンジしても良いでしょう。また経験を積むことで、MSLチームを統括するマネージャーになるというキャリアアップも可能です。

MA部門の他チームへ異動することも可能です。例えばよりストラテジーに携われるメディカル戦略チームや、セミナーの主催・企画やMRへの教育などエデュケーションプランニングを行うチームへ異動したり、RWEやHEORに強い興味があれば専門性を磨いて挑戦することも可能です。

さらにMSLの経験を活かして臨床開発部門へ移り、臨床試験の計画立案を担当したり、マーケティングの知識を持つ人はマーケットプランニング部門へ異動したりもできます。

MSLの需要は増加傾向にあるため、今後はさらに多様なキャリアパスが開拓されていくことが予想されます。

データで見るMSL

自宅でノートパソコンを使ってデータを分析している人

エイペックスは業界でもトップクラスに属する製薬チームを有しており、その中でもメディカルサイエンスリエゾン(MSL)の求人は公開・非公開含めて常に多数ご紹介している状態です。

今回は約50件の最新のMSLに関する求人情報を分析し、MSLに必要なスキルや資格、求められる英語力など、MSLへの転職を成功させるために必要な情報をまとめました。

①募集要件・資格

まずは、MSLの最新の募集要件と必要な資格を確認していきましょう。

必須の学歴

以下グラフのように、求人によって求められる学歴は異なります。一番多かったのは、理学士(BSc)の52%、次に理学修士が30%、文学士(BA)が12%と続いています。学歴の必須条件として、博士号(PhD)を求める求人は今回分析した求人においてはあまり多くありませんでしたが、基本的にMD、PhD、PharmDはどの求人募集でも歓迎される傾向にあります。

また、必須ではないものの、メディカルサイエンスリエゾン認定資格(JAPhMed)を歓迎するポジションもあります。

MSLに求められる学歴

領域経験 (TA経験)

領域の経験が必須かそうでないかは求人によって異なるため、気になるポジションがある場合は求人票を確認したり、転職エージェントを利用している場合は詳細を聞いてみたりすると良いでしょう。

特に、オンコロジー領域、ヘマトロジー領域、希少疾患担当のMSL募集の場合は、領域経験が求められることが多い傾向にあります。

MSLに求められる領域経験

②求められるスキル・経験

それでは、MSLへの転職ではどのようなスキルや経験が求められるのでしょうか。ここからは求人の分析結果を元に解説していきます。

MSL未経験でも応募可能か:

実は、求人票にMSLの経験が不要と記載されていても、それ以外の必須要件がある場合があります。

MSLとして実務経験がない場合には、

  1. 臨床開発部門、安全性部門、薬事部門、研究開発部門など何かしらの製薬企業での経験(ただしコマーシャル経験除く)

  2. アカデミアや民間企業での研究開発経験

  3. 薬剤師・看護師・獣医師などとしての臨床経験

  4. 医学・薬学・自然科学・生命科学系のPhD、もしくはPharmD、MD

などが必要となります。

MSLはKOLとの協働が多いため、規制当局や提携企業、KOLなどを含む社外のステークホルダーとのコミュニケーション経験がないと難しい場合があります。また稀ですが、募集領域の経験が豊富でその領域の科学的議論が可能であれば、MRやマーケティング人材でも応募を受け付けることがあります。過去にあった稀なケースとしては、5年以上のMRもしくはマーケティング経験があれば応募可能という企業がありました。

MSL経験が必須である場合は、明記されていない求人も多いものの概ね2〜3年の実務経験が必要となることでしょう。

MSLに求められる経験

③必要な英語レベル

ここからは求められる英語レベルをみていきましょう。

前述のとおり、MSLの求人ではレベルは違っても、以下のように基本的に英語力が必要とされます。

  • 日常会話レベルの英語力が必須の場合:
    グローバル本社との会議に出席しないケースが想定され、会話はあまり重要視されない可能性が高いが、英語医学論文読解に支障のないレベルや、 英語による研修を理解する必要がある場合が多い

  • ビジネスレベルの英語力が必須の場合:
    グローバル本社との会議に出席する必要があるケースが想定され、国際学会等において発表者への質疑応答や、最新の学会情報に関する詳細な英語による情報収集の必要性が想定される。

製薬企業がMSLに求める英語力のレベル

④福利厚生と働き方

ここからは求人票から読み取ることができた福利厚生や働き方をみていきましょう。

フルリモートまたはリモートワーク可能な企業:

  • リモートワークOKの企業:
    平均として、週2~3日の出社を求めるところが多い。ただし、MSLは学会への出席、担当領域における各地域のKOLとの面会など、半分以上はフィールドベースの勤務が一般的であるため、頻回な出張がある場合が多いのが現状。

  • フルリモートOKの企業:
    会社のポリシーとしてフルリモートワーク制度を導入している外資系製薬企業が複数あり、そういった企業ではポジションに関係なくフルリモートワークが推奨されている。MSLは出張が多いため、自宅から訪問先へ直行直帰できる範囲内での居住区が推奨される。ただし、東京に本社があるにも関わらず、関東圏外から働くなど、場合によっては勤務地を離れることを検討できる場合もある。

MSLの福利厚生と働き方

MSLへの転職を成功させた例

①MSLからMSLへ転職した事例

転職の理由:

「前職も製薬会社のMSLでしたが、前職が会社としてメディカルアフェアーズにあまり投資しない方針であったため転職を決意しました。」

MSL職のやりがい:

「KOLマネジメントの困難さゆえの上手くいったときの達成感、そして良好な関係を保つことは会社の成功にとって本当に重要だと感じるため、責任感の大きさもやりがいにつながっています。 」

MSL職の難しさ:

「MSLは科学的交流に特化しているとはいえ、KOLに何回会うべきかといった「営業」的な側面がKPIに反映されることもあり、時としてジレンマが発生するかもしれません。」

コンサルタントからのMSL転職のポイント:

「KOLから貴重な洞察を得るためには、コミュニケーション能力が最も大切です。企業によってはMSL未経験者でも応募を受け付けていますが、コミュニケーションスキルが不十分であったため採用が見送られることがよくあります。
また、MSLの仕事を十分に理解して転職を決意することが重要です。エイペックスを通してではありませんが、過去に研究者の方々がMSLに転職したものの、思っていた仕事内容と違うということで短期間で辞めてしまうケースもありましたので、事前のリサーチがとても大切です。」

担当:松田 裕子(製薬チーム プリンシパルコンサルタント)

②アカデミアおよび臨床現場の医療従事者からMSLへ転職した事例

転職の理由:

「アカデミアおよび臨床現場で医療従事者として働いていたため、その会社の治療薬のことをよく知っていました。そのため、苦しんでいる患者さんのためにその領域の治療薬の開発に貢献したいという強い思いを抱くようになり、該当領域を担当できるMSLのポジションに応募しました。」

MSL職のやりがい:

「MSLは医師とのコミュニケーション、臨床と研究の連携など、これまでの経験を最大限に活かせるポジションだと感じており、アカデミアでの経験も臨床での経験もどちらも活かせる素晴らしい仕事です。また、承認前と承認後のエキサイティングなフェーズをMSLとして経験できたことにも、やりがいを感じています。」

MSL職の難しさ:

「苦労したこととしては、出張が予想以上に多いことで飛行機や新幹線に何度も乗るため、耳を痛めてしまいました。もし心配であれば、国内外含め想定される出張の回数や期間について面接で聞いたほうがいいかもしれません。」

担当:ローダ・ラム(製薬チーム アソシエイトコンサルタント)

MSLへの転職を成功させた方の詳細を聞いてみる

MSLに転職する際のQ&A

Q. 製薬会社のMSLとは何ですか?

A. 日本製薬工業協会が提唱するMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)の活動に関する基本的考え方によると、MSLは担当する疾患領域における最新の科学知識に基づいて社外の医科学専門家と対等な立場で意見交換を行い、健全で良好な信頼関係を構築するとあります。つまり、高度な医学・科学的知識を活用して医療現場と企業の架け橋となる製薬会社のサイエンティフィックな顔となるような存在です。

自社製品のプロモーションには関わらず、こうした医学的・科学的情報活動を通じて医薬品の適正使用を推進し、アンメットメディカルニーズやクリニカルクエスチョンなどの課題解決のためのディスカッションを深め、医療の質の向上と患者利益の最大化に寄与することを目的としています。

Q. MSLの仕事内容は何ですか?

A. MSLの主な仕事内容は、KOLとの面談や学会出席、文献検索などによる最新の医学情報の収集・分析です。それらをKOLや社内関係者とのディスカッションに活用し、次の新薬開発や既存製剤の適応症拡大の可能性などのヒントにし、薬剤価値の最大化を実現させます。 科学的洞察の提供や論文作成、治験責任医師とのコミュニケーションをリードすることで、開発チームをサポートするのも業務の一つです。

また、情報発信のためのメディカルエデュケーションに関わることもあり、セミナーや講演会、メディカルアドバイザリーボードなどの企画・運営を行い、最新の医学情報を発信したり、営業部隊の教育・トレーニングを行うこともあります。

Q. MSLとMRの違いを教えてください。

A. MSLとMRの最大の違いはプロモーション活動の有無です。MRは自社製品の販売促進を主な目的とし、KPIも処方数や採用施設数、売上を基準としています。一方、MSLは営業部門からの独立性が保たれた状態でなければならず、評価指標も営業活動に関連するものであってはなりません。MSLの目的は自社製品の販売促進ではなく、中立的で健全な意見交換による領域の医療の発展と医科学会への貢献であり、高度な専門知識、科学的中立思考、高い倫理観を持つことが強く求められる職種となります。

MSLへの転職はエイペックスへご相談下さい

スーツ姿の人物が医療カンファレンスに参加している様子

MSLは、高度な専門知識と優れたコミュニケーション能力を活かし、医療の最前線で活躍できるやりがいのある職種です。KOLとのディスカッションなどにより、より安全で使いやすい薬剤への改善や適応症の拡大につながったり、アンメットメディカルニーズなどの課題解決への前進につながることがあります。

しかしその専門性の高さゆえに、転職において適切なサポートが必要なことも少なくありません。

エイペックスでは、製薬業界に精通した人材コンサルタントが、キャリアカウンセリングや非公開求人を含む幅広い求人情報の提供、履歴書の作成支援や添削、面接対策など、MSLに限らずあなたの製薬業界への転職を全面的にサポートいたします。具体的なサポート内容はこちらのサービスページからご確認ください。

あなたが興味や情熱を持つ領域の医療の進歩に貢献し、自身のキャリアも大きく発展させる可能性を秘めたMSLへの転職を考えている方は、ぜひエイペックスにご相談ください。

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