近年様々な要因で企業のM&Aが活況を呈する中、FAS(Financial Advisory Services)系コンサルティングファームの役割が増しており、それに伴い採用活動も活発化しています。
中でもBig4(デロイト、KPMG、EY、PwC)と呼ばれる世界4大会計事務所系列への転職は、幅広い産業分野での企業財務スキルとパワフルなコンサルティングキャリアが積めるとあって大変人気です。しかし、業界の経験がなくても転職は可能なのでしょうか。今回は未経験からでもBig4 FASの内定・採用を勝ち取るコツをご紹介したいと思います。
どんなスキルや経験が優遇されるのか
FASとは、主に企業のM&Aに関わるアドバイザリーやコンサルティング業務を行うファームのことで、企業規模によりますがコーポレートファイナンス、デューデリジェンス(トランザクションサービス)、バリュエーション(企業価値評価)、M&A戦略立案、経営統合(PMI=Post Merger Integration)などの他、フォレンジック(不正調査)、企業・事業再生などに関するアドバイザリーサービスも提供しています。
特にBig4 FASは、大手監査法人の系列に属し世界的にも幅広いネットワークを有するため、多岐に渡る産業分野にクライアントを有する他、M&A戦略の策定からPMIまでM&Aの全工程をワンストップで提供できるのが大きな特徴です。その工程の中で役割が細分化されており、それぞれの分野で人材を採用しています。近年は企業の様々な経営イシューに対してデータ分析からのソリューションが提供できるよう、データアナリティクス部門も立ち上げています。
未経験からFASに応募する際ですが、それぞれのサービスごとに求められるスキルセットは違います。が、最低限の会計知識と、今後M&A関連の業務に関与したい場合にはM&Aに関する基礎的理解が求められます。また、会計士やUSCPA、証券アナリストなどの会計・ファイナンス系の資格を有する方が優遇されるケースが多くあり、M&Aアドバイザリーのような法人ビジネスでは、銀行や証券会社の法人営業出身の方もポテンシャルで採用されることもあります。30代以上の方であればM&Aアドバイザリーの経験がある方や、周辺業務を理解している監査法人の会計士出身の方が望ましいでしょう。
またBig4 FASでは、邦人企業による海外企業の買収などクロスボーダー案件も多く発生するため、ビジネスレベル以上の英語力がある方が採用されやすい傾向ありますので、自身の英語力を磨いておくことも重要です。
BIG4 FASで人気の部門は?
Big4 FASは高い専門性を有するプロフェッショナル人材をいち早く育成するため、教育制度や研修が充実していることでも有名です。そのため短期間で経験を積んで一人前のプロフェッショナルに成長し、その後他の業界もしくは投資銀行等に転職する方もいらっしゃいます。この点では、ファイナンスに関するスキルセットが身に付きやすいバリュエーション・モデリング部門や、コーポレートファイナンス部門が最も人気があると言えます。
財務デューデリジェンスは、買収対象企業の財務状態を調査し財務リスクの有無を判定する業務ですが、会計士の専門性を最も発揮できる分野のため求人も多くあり人気もあります。基本的に日本の公認会計士(CPA)ないしはUSCPA合格者が配属されることが殆どですので、資格を持っていない方にとっては選択肢から外れることになるでしょう。
BIG4 FAS内定獲得のコツ
M&A業務に携わりたい場合、外資系投資銀行や証券会社のIBD(Investment Banking Division)を希望される方も多いと思いますが、どちらも定員が少ないこともあり内定を勝ち取るのは容易ではありません。その点、Big 4 FASはIBDと比べると採用人数も多く採用ハードルも低いため、ファームが採用に積極的な時期であれば内定獲得の可能性は高まります。
FASに限ることではありませんが、採用面接ではご自身の熱意と、希望する業務の知識や関連する経験をアピールすることが重要です。M&Aにおける一連の業務の流れや各工程での業務内容、それぞれの関わり方など、M&Aに対する理解と、なぜM&A業務を希望するのか、どういったM&A業務をやりたいのか、そしてなぜそのファームでなければならないかを話せるようにしておかなければなりません。
また、エイペックスのような業界専門のエージェンシーの力を借りることも内定獲得のチャンスを高めるには有効な手段です。どのような人材が採用されやすいのか、採用面接でよく聞かれる質問やアピールしておくと有効なスキルや経験など、多くの人材を斡旋してきたエージェンシーが知るノウハウは必ず活用してください。
業界の今後の動向・留意点
コロナ禍や加速するDXなど様々な要因でM&A案件が動いていることもあり、FASは採用に積極的な傾向にあります。人員が足りている場合は経験者のみの募集であることが多いですが、ディールやプロジェクトが増え多忙になる傾向がある時は、若手(30代前半まで)に対する採用ニーズも高まるのが特徴です。
高いブランド力、幅広い産業分野での高い専門性、豊富なグローバル案件、グループ間の異動や海外駐在など多岐に渡るキャリアディベロップメントの機会など、Big4 FASには多くの魅力があります。ただ注意すべき点としては、FASといってもフォレンジックなどM&A業務以外のプロジェクトにアサインされる可能性もあり、自身の志向とは異なるキャリアになってしまうリスクもあります。そのため、内定時には希望の配属部署をしっかりと伝えておくことが肝要です。
また、Big4 FASはアソシエイトからパートナーまで実力主義による昇進・昇給モデルがしっかりと整っているのも特徴であるため、未経験で入る場合は上司が年下になるケースもあります。年功序列の古い概念に囚われず、柔軟に対応できるスキルも備わっていなければなりません。人材の流動性も高い業界ですので、ずっとFASで働いて上を目指すのか、自身のキャリア実現のためスキルアップのためにFASにいくのか、自身のキャリア戦略を明確にすることも転職活動においては大切でしょう。