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専門コンサルタントに聞く 医療機器業界のマーケティング職

成長が続く医療機器業界。求人数も堅調に推移していますが、その中でもマーケティング職は近年トレンドが変わってきています

そこで、リクルートダイレクトスカウトが発表した「ヘッドハンターランキング2022」でも表彰された医療機器業界専門コンサルタントの山村日向子さんに、医療機器業界のマーケティング職について詳しく話を聞きました。この分野で転職を考えている方は必読です!

※外資系医療機器メーカーに転職を希望する方に向けて、職種や転職の際の注意点もご紹介しているため、そちらもご覧ください。

Q. 医療機器業界全体を見渡して、最新の市場動向や採用のトレンドを教えてください。

A.
まず大前提として、医療機器業界は数十年単位で国内、グローバル市場ともに順調かつ安定して成長を続けており、高齢化や新興国の需要拡大などの要因を追い風に、今後もその傾向は続くと予想されています。
そして、日本市場はグローバルにとっても引き続き重要な市場であり、日本市場に新たに参入する企業は常に一定数あるため、求人数も今後も堅調に推移することが想定されます

また、医療機器業界はテクノロジーとの相性が良く、「医療×IT(ヘルステック)」のスタートアップ企業も近年ますます増加傾向にあり、将来性に魅力を感じ大手メーカーから転職される方々も徐々に増えつつあります。スマートフォンを活用して診断・治療を支援する「プログラム医療機器」も活況で、採用も多く今後成長が見込まれる分野の一つです。

こうした背景から、医療機器業界は職種を問わず求人数は着実に伸びていますが、特にここ数年でトレンドの一つとなっているのが、デジタルマーケティング、コマーシャルエクセレンスといった職種です。今まで医療機器業界はどちらかというと営業主体で販売拡大を目指すスタイルが主流でしたが、より戦略的・効率的な営業組織を企業が模索している中で、コロナ禍による医療機関への訪問規制を機に、営業組織の在り方の転換が大きく進みました。そこで、対面以外でデジタルを駆使してDr.にアプローチするための「デジタルマーケティング」、データを駆使してより効率的・効果的な営業組織を構築するための「コマーシャルエクセレンス」といった分野の重要性が高まり、ここにきて求人数が増加しています。

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Q. 医療機器企業のマーケティング職について仕事内容を教えてください。

A.
医療機器業界のマーケティング職で最も多い求人は「プロダクト・マネージャー(プロマネ)」で、製品戦略の企画・実行を担う職種です。主な仕事内容としては、

  • 担当製品のブランディング・マーケティング戦略の立案・実行

  • 市場動向の調査・把握・分析

  • 医療従事者向けの学術セミナー・展示会・イベントの企画・実行

  • KOL(Key Opinion Leader)マネジメント

  • 営業担当者や販売代理店へのセールストレーニング

  • カスタマーサポートと営業のフォロー

  • グローバル本社や社内関係部署との協働・調整

などで、担当製品のコマーシャル責任者という位置づけです。

ただし、仕事内容については企業によっていくつか違いがあり、応募の際には考慮が必要です。
例えば、大手外資系企業などの大規模な組織であれば、マーケティングチームの中でも職種が細分化されていることが多いのに対し、小規模な組織であればプロダクト・マネージャーが後に述べるマーケティング・コミュニケーションのような業務もすべて担っていることもあります。
また日系・外資系の違いで言えば、日系企業の場合はマーケティングの職務内容に商品開発(いわゆるアップストリームマーケティング)も含まれていたり、外資系企業であればマーケティングと営業との業務の縦割り構造が明確である、といった特徴もあります。

Q. マーケティング・コミュニケーションとはどんな職種ですか?

A.
大手外資系メーカーの場合、「マーケティング・コミュニケーション(マーコム)」と呼ばれるポジションがマーケティング部門の中にあることがあります。ただ企業によって職種タイトルは様々で、「デジタルマーケティング」、「イベントコーディネーター」といった名前で似たような業務を担当しているケースもあります。
プロマネが担当製品の数字責任を持ち製品戦略を担う職種であるのに対し、マーコムは製品ブランディングやイベント管理など、プロマネの補佐的役割を担うことが多いです。例えば展示会やセミナーの運営、会社のWebサイトの管理、営業職が販売促進に使用する資料(デジタルコンテンツ含む)の管理などが考えられます。そのなかでもデジタルコンテンツに関わる業務に特化している職種では、名称が「デジタルマーケティング」となっているケースがあります。

エイペックスが採用パートナーとなっている医療機器企業の3~4割ほどに、プロマネのほかにこういったマーコム系のポジションがあります。

Q. デジタルマーケティング職について詳しく教えてください。

A.
「デジタルマーケティング」は、ここ数年で一気に募集が増えている職種です。
ただし、医療機器業界においてはこの分野はまだ発展途上で、同じ「デジタルマーケティング」というタイトルでも企業によって業務内容に違いがあることがあります。
例えば、上記に記載した通りマーコムの方々が一部行っているような高度なデジタルマーケティングに関わる専門知識が必要とされないオペレーションレベルの業務を行うケースから、Webサイトの開発やデジタルマーケティング戦略などの高い専門性が求められるケースまであります。
そのポジションがどのレベルのスキルや経験を求めているのかは、担当コンサルタントに確認するのが良いでしょう。

また、デジタルマーケティングのポジションは募集要項にマッチした人材が少なく、企業間で取り合いのためヘルスケア業界以外からの転職者が増加しているのが特徴です。

他業界からの転職の場合、医療機器の中でも自由診療領域(美容医療や一部の歯科、眼科領域など)と、保険診療領域ではコミュニケーションのアプローチが違いますので、ご自身のご経験を活かせる領域を選んでいただくと転職後のキャッチアップがスムーズかもしれません。
自由診療領域であればBtoCがメインとなるため、他業界のメーカーやコンシューマー出身でもその経験が活かせ、異業界でもそれほど齟齬を感じないかもしれません。
対して、保険診療の場合はBtoB(ドクター)向けのコンテンツ制作が基本となるため、業界のレギュレーションを理解していないと難しいことが多いでしょう。一般消費者向け・患者様向けのWebサイトなどを請け負うことも一部ありますが、そこでも高いレベルで業界のコンプライアンスを遵守することが求められます。保険診療領域では、製薬やライフサイエンスなどのヘルスケア出身者、または業界専門の広告代理店などベンダー側の人材のほうがフィット感があり、実際に転職を成功されている方も多く見かけます。

ただ、現在の流れとしては医療機器業界もデジタルコンテンツの拡充には注力しており、今後ますます業界間の垣根を超えた採用が活発化していくポジションだと予想されます。


Q. 製薬会社とのマーケティング職の違いはあるのでしょうか?

A.
基本的に、マーケティングの使命は「売り上げの最大化」のための戦略立案と実行ですので、その点において大きな違いはないかと思います。ただ、実際に製薬業界から医療機器業界に転職された方のお話を伺うと、扱う製品の特性上、顧客へのアプローチの仕方にはいくつか違いがあるようです。

1つ目の違いとしては、医薬品と違って医療機器の場合は自社製品を使用してもらうためにドクターに使用方法を理解し、技術を身に着けて頂く必要があるいうことではないかと思います。マーケティング活動にもそこが大きく影響します。
学会の企業ブースや企業主催セミナーでは、製品を展示してそこでドクターに実際に機器に触れてもらう機会を提供したり、セミナーのほかにもドクターに対するトレーニング(Dr to Dr含む)を企画したり、実際にオペに立ち会うこともあります。ドクターが「この製品を使ってみたい」となっても、その製品を正しく使用いただけるようになるまで技術的なトレーニングやフォローアップが必要となる点は、製薬業界の方々からすると新鮮かもしれません。

また、医療機器のライフサイクルの方が医薬品のライフサイクルよりも早い、という点もマーケティング活動に影響を与える違いの一つです。医薬品は研究・開発から製品販売までに10年以上という年月をかけることも珍しくありませんが、医療機器の場合は新しい技術を比較的製品に反映させやすく、製品開発期間は一般的には医薬品よりも短いです。よって、細かなアップデートやラインナップの多様化に伴う新製品の発売は数年おきにされている印象で、そのようなライフサイクルの違いからか、医療機器業界の方が「ビジネスのスピード感が早い」と仰る方も中にはいらっしゃいます。

また、医療機器企業は製薬企業に比べると全体的に規模感が小さめの企業が多く、社内での業務の細分化もそこまで進んでいないことが多いため、企業やポジションによっては「ここまでマーケティングの業務になるのか」と驚かれることもあるかもしれません。

ただし、製薬出身者を好むかどうかはメーカーやポジションにより異なりますので、このあたりの情報はぜひ弊社のコンサルタントに聞いてもらえればと思います。

Q. どんなスキルがあれば、医療機器業界のマーケティング職に転職できますか?

A.
まず、なんといっても英語力です。英語でミーティングに参加でき、意見交換できるレベルが求められます。
マーケティング職であればほとんどの選考プロセスで英語面接がありますので、そこを通過できるくらいのレベルであれば大丈夫です。大所帯のマーケティングチームであることは稀ですので、スタッフレベルでも直接APACやグローバルとやり取りできるコミュニケーションスキルが求められます。
内資を希望しているから必要ない、ということはなく、日本企業も海外進出を促進しており当然英語力が必要です。内資系のグローバルマーケティング職は現在大変人気のポジションです。ただし、外資系からの転職の場合は給与が下がるケースがほとんどのため(約1~2割ダウン)、やりがいやご自身の興味、モチベーションとのバランスになると思います。
マーケティング未経験で転職を希望されているのであれば、英語力を磨いておくことをおすすめします。その領域で豊富な経験とKOLとのリレーションがあれば、若手のジュニアなポジションであれば募集がないわけではありません。ただし、その場合にあと必要なのは英語力というわけです。 

また、コロナ禍以降はよりクリエイティブな人材が求められるようになりました。医療機器業界も新しいビジネスモデルを作らなければならない、従来型のセールスストラテジーを見直さないといけない、という転換期の中、時代に即したアイデアを発案できるか、新しいことを取り入れるときにどれくらいクリエイティブに動けるか、などが見られるようになりました。マネージャー以上では、よりその傾向が強くなっています

管理職の採用面接では、「今会社がこういう状況であり、こういう課題があるがあなたならどうする?」といったディスカッションが待っています。こういった質問では、100%の正解を答えることが求められているというよりも、解決のための道筋の立て方を説明できることが大事で、あなたのクリエイティビティと即戦力として活かせる経験があるかどうかが見られています。このディスカッションがはずんだ候補者は、実際良い結果の方が多いのです。

最後に、コミュニケーションスキルも非常に重視されるスキルの一つとして挙げておきましょう。マーケティングは社内外の様々な利害関係者のハブとなって動く部署ですので、たとえ戦略や分析ができても他部署との調整で確執を生むようではうまく機能しません。経験・スキルがあるのに採用面接を通過できないのは、整合性はあれど相手を説き伏せてしまう上から目線が垣間見えたから、という理由も採用担当者から聞く話です。   


Q. マーケティング職の年収はどれくらいですか?

A. こちらにあげるのは一般的なプロダクト・マネージャーの年収レンジです。

  • 内資系:スタッフ500~800万円、マネージャー以上800~1,100万円、 ディレクター1,200~1,600万円

  • 外資系:スタッフ600~1,200万円、マネージャー以上1,000~1,600万円、 ディレクター1,500~2,200万円

  • 国内のスタートアップ(ヘルステックなど)はこれよりも低いが、その分手厚いストックオプションで将来性を買ってもらう傾向

現職で上のポジションを狙って年収を上げていくのが王道のキャリアパスですが、早くタイトルを上げることを目指すのであれば、大手企業から小~中規模の企業やスタートアップへの転職も視野に入れると良いでしょう。組織全体の規模感が小さくなるほど各職位がマネージする部下の数も少なくなりますので、そこまで大きな組織マネジメントの経験がなくてもタイトルと年収を上げられるケースがあります。

Q. 最後に、転職を考えてる方にアドバイスをお願いします。

A.
今すぐの転職は考えていないという方が多いと思いますが、常日頃から市場情報を見ておくことが今後の良いキャリアの積み方だと感じています。
医療機器業界でも事業部分社化や社長の交代、早期退職など、予期せぬ外的要因で転職を考えなければならない事態が起こりえます。そんなとき、日頃から求人情報を見ていると自分の興味や志向がわかり、年収の感覚も掴め、いざというときに優先順位をつけやすいものです。

エイペックスでも、将来に備えてキャリア相談を申し込まれる方が数多くいらっしゃいますが、そんなときはその方の希望に合致したポジションが出たときだけメールでお知らせしたりしています。自分は何がしたいか、どんなキャリアが理想なのか、そこに合わせて次のステップを考えることが大切であり、そのためにエイペックスのようなプロの力を借りるのも、ご自身の能力の一つになると思います。

※マーケティング職については、こちらの記事もご覧ください。
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