ブログ記事一覧に戻る
Blog Img

【オンボーディングとリテンション】専門家が効果的な人事戦略を解説!

■本記事の執筆にあたり、以下の企業の人事担当者の方々から貴重なご意見を賜り、心より感謝申し上げます。

Satoko Baba, HR Director

Danaher Japan

Akeo Masuda, Senior HR Manager

Thermo Fisher Scientific

Ryuichiro Sugimoto, Head of Talent Acquisition for APJ North - Japan, Greater China and Korea

Adobe Incorporated

Suwami Hayashibara, Director, HR, Business Administration & IT

Microport Orthopedics

Senior HR Director

Global Medical Device Company (順不同)

はじめに

新入社員を迎え入れる際に多くの企業で課題となっているのが「オンボーディング」と「リテンション」です。「オンボーディング」とは、新人研修をはじめ新入社員が早く即戦力となるために企業が実施する施策やサポートであり、「リテンション」はその人材を流出させないための取り組みのことです。
この2つは人事戦略において大変重要な要素なのですが、日本は常に売り手市場であり、加えて転職が当たり前となった現在、この2つがうまく機能しているという企業は少数派となっています。実際に従業員は企業に対し何を求めているのか、仕事満足度に対する社員の意識の変化とエンゲージメントについて正しく理解することで、企業はこの課題を克服しなければなりません。

​本記事では人事専門家の意見をもとに、人事担当者が直面するオンボーディングとリテンションにおける課題について解説し、またこれらに対処するための実践的な戦略をお伝えします。従業員の価値観の変化やリモートワークがエンゲージメントに与える影響をきちんと理解することで、各企業がこれらの取り組みをより効果的なものに変換できることを期待したいと思います。

企業が直面する人事課題とは

  1. 売り手市場:日本では現在あらゆる業界で早期退職者募集が行われているにも関わらず、依然として求人数が求職者数を上回る売り手市場が続いています。日本の市場では一定の資格や経験を持つ優秀人材は絶対数が足りておらず、そういった人材は自分の市場価値を理解しているため、頻繁に転職してキャリアアップを図る必要がないと考える傾向にあります。

  2. 採用面接の簡素化と人的ネットワークの広がり:コロナ禍により採用面接はオンライン(WEB)が主流となり、求職者はより手軽に面接を受けられるようになりました。これはつまり、社員が入社するまでにより多くの企業や採用担当者と関わってきたことを意味し、また転職の機会が増えたことで従業員の人的ネットワークが広がっていると考えられます。

  3. 仕事満足度の変化:入社後2年以内に退職する従業員を調べてみると、その大半は新しい職場に慣れる前の6ヶ月以内で退職しているという傾向があります。これは日本人の仕事に対する価値観の変化によるものであり、「雇用の安定」から「仕事満足度という個人の『感情』」へ重視されるポイントがシフトしてきているためであり、多くの企業が人事戦略におけるオンボーディングとリテンションで見逃している点であると言えます。
    これまで:安定・安全が優先され、転職するよりも厳しい環境であっても現職に留まる選択肢のほうが好まれ、会社と「つながっている」状態が一般的でした。リモートワークには利点もあることは理解されていますが、従業員のエンゲージメントでは考慮すべき選択肢ではありませんでした。
    現在:たとえ苦労して転職したとしても、仕事内容、企業文化、自分の期待値などあらゆることで満足できない部分がある場合、最初の3~6ヶ月で退職するケースが多く見受けられます。中程度のレベルの人材でも転職のチャンスは多く、変化に対する抵抗が少ないのが現状です。

  4. 転職に対する意識の変化:2008年から2009年にかけてのリーマンショック、2011年の東日本大震災、今回のコロナ禍など時代の大きな出来事により、あらゆる業界で企業の縮小が繰り返され、1~3回の転職は当然の時代となりました。転職を繰り返せば当然求職者は市場にも精通するようになり、多少の転職であればそれほど大きな影響を及ぼすことがないのを理解し、企業側も数回の転職であれば当たり前のこととして受け入れてるようになっています。さらに、フリーランス、契約社員、企業顧問など様々な雇用形態が選択肢として考えられるようになりました。

  5. 前職という選択肢:たとえ応募先企業の内定を辞退しても、その企業やリクルーターとの関係が続くことは非常に多く、逆に内定を受諾し転職しても以前の勤務先とコンタクトが続いている候補者も多いのです。「ブーメランのように元の会社に戻ってくる社員」は、近年想像以上に増加傾向にあります。

  6. コスト:せっかくの即戦力人材であるのに、採用プロセスの後半や入社1年目、それ以降であってもその人材を失うのはリソース、ブランド、効率の面でも避けるべき事態であり、経営や業績の面でも有能な社員の流出は会社全体の士気を下げることになります。優秀社員の流出は転職市場でもその企業の悪い評判につながりやすく、代わりの人材を集めるのがますます難しくなるという悪循環も生んでしまいます。

課題解決のための5つのステップ

  1. プロセスとプレゼンス:社員と人事部、採用担当者と直属の上司、場合によっては面接に同席する関係者の間でコミュニケーションや打ち合わせの機会を促進するシステムを構築すること。

  2. 競合の施策と自社へのカスタマイズ:従業員が最も大切だと考える要素は何か、また他の企業がどうやって優秀な人材を獲得し定着させているのか、その施策について研究すること。従業員により長い期間勤めてもらうにはどんなメリットやインセンティブが有効であるか(例:RSU、ディファード・ボーナス、インセンティブなど)検討すること。

  3. フィードバック:新入社員が最初の数週間から数ヶ月の間に何を考え、何を感じているかを理解すること。そのため面談をあらかじめ設定し、積極的に新入社員の様子を確認すること。

  4. 整合性:新入社員が、上司から求められている内容に沿った適切なトレーニングを受けているか確認すること。

  5. レビューと改善:オンボーディングとリテンション戦略を継続的に改善するために、経営陣など関係者と成功や失敗を共有し、改善策を立案・実行すること。

採用戦略がオンボーディングとリテンションに与える影響

採用担当者とタレントアクイジションの連携

どんな新入社員にも、目的や目標があるはずです。その社員にとって6ヶ月後、1年後、そしてその先の成功は何でしょうか?個々の目的をしっかりと把握し、社員と透明性を持って頻繁にヒアリングを行っていますか?新入社員を採用する際にも検討されるべき課題です。人材獲得と定着がうまくいかないポジションや分野などがあれば、データに裏付けされた洞察を共有し、これらの課題に対する個々の解決策を提案していくことが大切です。

採用プロセスにおける理想的な候補者エクスペリエンスの策定

企業であれ個人であれ、人の第一印象は重要です。第一印象で信頼感が生まれたり、目的を共有できたりといった個人的な感情が芽生えることもあれば、反対に小さな違和感が生まれてしまうこともあり、十分配慮が必要です。

  1. スケジューリング:採用担当者や候補者と直接連絡を取り合い、採用スケジュールがスムーズに進むよう確認しましょう。面接のプロセスやスケジュールについて関係者全員と期待値を設定し、リスケは最小限に抑えるようにしましょう(グローバルの面接官は、しばしばこの点について無頓着です)。

  2. 売り手側になる:買い手側ではなく「売り手側」として立ち振る舞い、面接官全員がそのように機能するよう訓練しましょう。求職者はあなたやあなたの企業を面接しているとも言えるのです。ポジティブで、魅力的で、熱意があり、他社と差別化できる個性を示しましょう。

  3. 募集要件と評価方法募集要件は何か、またそれに基づいて候補者をどのように評価するのか、明確かつ簡潔な方法があることが重要です。求職者のどの点を評価し、そのためにどんな質問をするのか、各面接官が明確なアジェンダを持って面接に臨んでいますか?

  4. 優れた面接プロセス:中間管理職~シニアレベルの候補者であれば、面接プロセスは3~5回が理想的です。候補者の評価のために、多くの企業で技術的な評価/テスト、ケース面接、プレゼンテーションなどが実施されますが、これらの手法を取り入れる場合候補者の時間や気持ちに寄り添うことも重要で、実施後はタイムリーににフィードバックを提供できるようにしましょう。

成功事例を活用するのもあり

組織内でどのような成功事例があるのか(同じような役割や分野で特に採用が成功した新入社員など)、どのようにこれを活用し今後のために改善できるのか、この社員をメンターにするなどオンボーディングプロセスの中に組み込むことが可能なのか、成功事例の活用も考慮すると良いでしょう。

オンボーディングプロセス改善のために

​企業文化・価値観からスタートしてみる

入社後1週間以内に(早ければ早いほど良い)、主要なマネージャー、チームメンバー、経営陣と新入社員ミーティングを開催し、ビジョンと目的を共有しましょう。これは早い段階からの従業員エンゲージメントの育成にとって重要な要素であり、新入社員が学ぶ手順やプロセスよりも優先して企業文化や価値観を構築することができます。以下はその例となります。

  • 従業員エンゲージメント戦略

  • 昇進プロセスと明確なマイルストーンの設定

  • 透明性の高いインセンティブプログラムの説明(RSU、インセンティブ、ボーナスの支給とスケジュール)

  • キャリア開発研修(社内外)

  • チームビルディングのための取り組み

  • 従業員家族のエンゲージメント

  • SDGsを含めたCRS(企業の社会的責任)活動(該当の場合)

​新入社員入社のお知らせ

関係する従業員に新入社員の入社を知らせる簡単なメールを送りましょう。それだけで新入社員を歓迎する雰囲気を作ることができます。入社日前でも良いですし、最初の1週間や1ヶ月の間に社内ミーティングで実施しても良いでしょう。大々的に発表する必要はありませんが、新入社員が自分のチームだけでなく、会社からも歓迎されていると感じることが重要です。

メンターシップ・プログラムを持つ

効果的なメンターシップ・プログラムは、従業員のエンゲージメントを育みポジティブな文化を醸成します。また、社員も新入社員のメンターとなることで将来的なリーダーとなるべく自身の資質を高めることができます。メンターは同じチームから選出する必要はなく、新入社員を励まし、解決策を提案し、ナビゲートする役割をどう果たしていくのか、人事部とトレーニングを受け機能させるようにしましょう。またいつ、どのように人事部や上層部に問題を報告すれば良いのか、オンボーディングプロセスの初期段階で問題提起しておくことで良い結果につながることが多いのも、メンターは理解しておく必要があります。

仕事の目的、期待、報告の仕方について話し合う

募集から入社初日まで求めるその職種の業務内容は変わらずとも、ビジネスは刻々と変化します。その結果、そのポジションに対する期待や優先順位が変わることもあります。大事なことは、マネージャーが新入社員に対し最新情報を伝え、職務に対する期待、目的、マイルストーンを明確に設定し、それをどのように報告するのかに注意を払うことです。

試用期間

試用期間については、人事部と採用担当者は日本の労働法を熟知している必要があり、そうでない場合は法務チームに相談しておきましょう。オファーレターおよび従業員ハンドブックに試用期間について明確に記載すること、内定段階できちんと話し合っておくことが大切です。デリケートな話題であるため、人事がミーティングとプロセスをリードし、採用担当者との足並みを揃えておく必要があります。KPIなど業績評価指標が試用期間中に設定されている場合は、最初の3ヶ月間の目標や目的についての話し合いの中で、再度話し合っておきましょう。

効果的なオンボーディングプログラムの作成

効果的なオンボーディングプログラムの作成には、ステークホルダーのコミットメントと参加が必要です。人事部やオンボーディングチームがこのプロセスを推進できるのは、会社のインフラと経営陣のサポートがある場合に限られるからです。経営陣はオンボーディングプログラムをサポートするだけでなく、プログラムを通じて期待される仕事内容について理解し、それを準備する必要があります。採用担当者は英語で書かれた研修マニュアルやプロセスをよく理解していないことが多いため、内容はできる限り日本語で準備するほうが効果的であると多くの人事担当者がコメントしています。

ある企業の人事部長の話ですが、タレントアクイジションを担当する社内リクルーターのKPIの一つに、新入社員がオンボーディングプロセスをすべて完了したかどうかを取り入れるシステムを導入したと話してくれました。KPI達成のためには、リクルーターが入社日前にオンボーディングの書類が新入社員にすべて渡っているかを確認し、オンボーディングとチーム合流中は採用担当者と一緒に社員をフォローアップすることが必要となります。タレントアクイジションは単なる引き継ぎではなく、HRオペレーション/ビジネスパートナーとの間でシームレスなプロセスと共同責任を持つことが重要であると話してくれました。

別の人事部長ですが、以前の会社で「候補者エクスペリエンス」、「オンボーディングエクスペリエンス」、「従業員エクスペリエンス」の改善に焦点を当てた「エクスペリエンス・ドライバー」となる人事担当者の任命について話してくれました。これは社内では「3X」と呼ばれ、人事担当者は面接の日程調整やエージェントとのやりとりなど従来の採用業務から解放され、3Xの改善に専念できるようになったと言います。面接では、エクスペリエンス・ドライバーが面接官に候補者の印象を聞くことにし、面接官が全体的に採用に好意的であればエクスペリエンス・ドライバーが面接の最後に加わり、候補者がさらに会社に興味を持つようリードします。入社後は、定期的な1on1ミーティングを通じてメンターとしての役割を果たし、一貫した接点を設けることで社員が本音を吐露できる心理的安全性を醸成できる、というわけです。

また別の人事部長から、新入社員がパフォーマンスに責任を持たず、学習だけに集中できる90日間のオンボーディングプログラム(ビジネス、人、組織、コアバリューと行動、自己学習)について話を聞きました。これは企業にとって特筆すべき投資であるため、オンボーディングカリキュラムのインパクトと有用性が非常に重要となります。またコロナ禍初期のリモートワークで、その企業のグループ会社で新入社員のエンゲージメントスコアが低下していることに着目し、部長を中心にラジオやブログのような形で社員にインタビューを行うミート&グリート・バーチャル・エンゲージメントプランを立ち上げました。これにより、新入社員はコミュニティに参加している感覚を養え、同時にステークホルダーも自分たちのコミットメントをトップから明確に提示できる機会を持てたと言います。

定期的なコミュニケーション

従業員の満足度とパフォーマンスの維持には、継続的なコミュニケーションが重要です。入社1日目、7日目、14日目、30日目、60日目、90日目などの間隔で定期的にコミュニケーションを取り、従業員エクスペリエンスに関するフィードバックを収集するプロセスを確立させましょう。

ある人事部長は、「マイクロマネジメントの感覚(ネガティブな感覚)」と、「成功し、会社の期待に応えるために必要なことを教えてほしい」という感覚の絶妙なバランスについてコメントしています。効果的なオンボーディングプロセスを確立させたいのであれば、後者のメッセージを構築する必要があります。

マネージャーによる1on1を実施することは会社の方針かもしれませんが、その効果は新入社員を管理するマネージャーのスキルや新入社員のコミットメントによってばらつきが出てきます。特に新入社員研修の際には、人事/オンボーディングチームはすべてのマネジャーが従うべき方針とプロセスをきちんと構築しておく必要があります。

フィードバックを引き出す

新入社員が自分の経験や改善点を共有し、面接や採用プロセスに貢献できるようにしましょう。採用のタイプに合わせてカスタマイズすることができますし、さまざまな段階やタイミングで実施することができますが、すべての新入社員からフィードバックを得ることが重要です。

  • リーダーシップの早期育成:フィードバックを引き出し会社への貢献を促すことで、将来的に大きな成果が期待されるリーダーの早期育成につながることがあります。オンボーディングとリテンションプログラムを見直す際には、この早い段階からのリーダーの育成についてステークホルダーと話し合っておく必要があります。

  • インフルエンサーの特定:前述のリーダーシップの早期育成とは違い、インフルエンサーはポジティブな存在にもネガティブな存在にもなり得ます。人事部や関係者は社内で影響力のある人物を特定し、彼らのコメントや意見にどのように対処すべきか理解しておくことが大切です。

​アナリティクスとモニタリング技術の活用

人事担当者の何人かが、オンボーディングとリテンションの両方を継続的に改善するための指針として、アナリティクスの活用について話してくれました。

ある人事部長は、2年目の社員の定着に苦労していることを例に挙げていました。従業員エンゲージメント調査を分析した結果、1年目や3年目の社員のスコアは高いのに、2年目の従業員のスコアが全体的に低いことがわかったのです。そこで、2年目の社員が他部署や事業部、ファンクションなどを学ぶ学習システムを導入し、2年目社員のエンゲージメントを向上させる施策としたのです。

人事・採用担当者は、新入社員が何の兆候もなく突然退職してしまうのを経験されていることでしょう。このような「突然の離職」を軽減するために、ある人事担当者が「モニタリング」の重要性を語ってくれたのですが、新入社員の動向の可視化のため採用担当者がツールを使って毎月報告することを提案したそうです。

提案したツールのひとつが「フローマトリックス」です。横軸を社内の職位に、縦軸をストレス評価の結果とします。ストレスという言葉をプレッシャー、責任、説明責任などに置き換えてみると、高いレベルのスキルを持つ社員にはより大きなプレッシャーがかかることが期待されるはずです。それが刺激となり、モチベーションにつながります。もし仕事内容がこのレベルに達していなければ、その社員のエンゲージメントが失われるリスクが高まるということであり(従業員が退屈している)、逆にハイクラスに属さない社員にプレッシャーや責任を与えすぎると、リスクや潜在的な失敗を理由にエンゲージメントが失われやすくなる、ということになります。このマトリックスを使用すれば、その社員の能力に応じてプレッシャーや責任を与え、スキルが向上していけばそれをまた増やす、というふうに追跡できるわけです。マネージャーには、このマトリックスにメンバーをプロットしてもらい、毎月の動きや気づき、アクションを説明してもらいます。

離職リスクのある社員は、その兆候が表れることが多くあります。人事チームは採用担当者、メンター、その他の関係者に、従業員エンゲージメントの欠如を示す「危険信号」、勤務態度の変化、有給休暇取得の頻度、Video callに顔を出さないなどその兆候について指導することができます。

リテンションにかかる費用

優れたリテンションプログラムの構築には費用がかかります。しかし、それを導入しないことでより大きなコストが発生することにもなります。

さらに、優れたリテンションプログラムは企業にとって価値ある投資であり、利益を生む中心的な役割として追跡調査を行う必要があります。

企業によっては、新入社員の獲得に関するKPIを設定し内定獲得につなげる一方で、入社後すぐに退職してしまう社員のコストを認識していないことがあります。何人かの人事担当者と話をしたところ彼らはこのギャップを認識しており、採用活動についてグローバルや地域との連携がいかに重要であるかについて語ってくれました。多くのハイテク企業が大量の人員削減を行い、CEOが「採用が早すぎた」と反省するケースをよく目にするようになっています。

新入社員がその採用のコスト以上に会社に利益をもたらすためには、平均して2〜3年の雇用が必要だと人事担当者は話しています。例えばコンサルティング会社は、従業員のリテンションと収益が早い段階から密接に結びついていること、そのためリテンションがいかに企業にとって重要であるかを認識しています。コンサルティング会社の採用担当者はオンボーディングプログラムへの参加率が高く、早期にリテンションを達成できる傾向にあります。

ある人事部長が、インプットから始まりアウトプットに至る3年間のスライドスケールを提供してくれました。

  1. 1年目:学ぶ(インプット)

  2. 2年目:人間関係の構築(インプット)

  3. 3年目:貢献する(アウトプット)

  4. ATS・ワークフローソフトウェア

これは、私が話を聞いた5人の人事部長全員が重要視していた点でした。自動化されたワークフローのリマインダーやチェックリストではなく、より人間的なコミュニケーションに近い形で当事者と関わるために作られたワークフローソフトウェアは、非常に有用であるということで意見が一致しています。オンボーディングとリテンションの課題を解決する方法について、人事専門家やベンダーとさらにリサーチやディスカッションを重ね、時間をかけて考えたいと思います。

ここで一つ挙げておきたい課題が、ワークフローの導入やソリューションにおけるグローバルとの明らかなギャップです。

  • グローバル発信のATSやHRワークフローのテクノロジーは、言語と全体的なUI/UXの面で日本で適用しにくい。

  • 日本独自に作られたソフトウェアは、おそらくほとんどの外資系企業で使用されているグローバルERPのスタンダードではない。

オンボーディングチェックリスト

入社前:

  • 内定者がオファーレターにサインしたら、入社歓迎のメールを送りましょう(理想は24時間以内)。私的で歓迎の意を表す心のこもったものにすることが大事です。内定者は退職の手続き中で、他社からのオファーを断ったばかりかもしれないことを忘れないでください。

  • 入社日まで何をすれば良いのかスケジュール(必要な書類、ウェルカムパッケージ、社員ハンドブックなど)を送りましょう(スケジュールに従うこと、可能であれば初日までにオンボーディングドキュメントに電子署名してもらうこと)。

  • 新入社員が会社のコンテンツに興味を持つようサポートしましょう(従業員のストーリーや最近の社内イベントの写真など、社内で作成したコンテンツやYoutube、Instagram、Facebook、プレスリリースなどオンラインコンテンツでも良い)。

  • 人事と採用担当者の両方に新入社員について情報交換できる場を設け、いつでも質問してもらえるようにしましょう。

  • (できれば)ビデオ通話やチームランチ/ディナーを通じてチームに紹介しましょう。

  • (できれば) 入社の数日前に、採用担当者/直属の上司とのVideo Callを設定し、歓迎のムードを演出して緊張をほぐしましょう。

入社日:

  • 新入社員のために居場所を用意しましょう。ほとんどの新入社員はその場所で一日を過ごすはずであり、快適で歓迎されていると感じられることが重要です。

  • パソコンのログイン、Eメール、社内コミュニケーションのプラットフォーム、CRM、電話、ノートパソコン、iPadなどワークスペースを設定しましょう。

  • 新入社員のデスクが清潔で、他の従業員の物が置かれていないよう配慮しましょう。

  • 研修プロセスの日程表と、最初の1週間/1ヶ月で期待することを伝えましょう。

  • (できれば)企業ブランドのアイテムまたは特典(マグカップ、ペン、ノート、バッグ、アパレルなど)を用意しましょう。

最初の30日間:

  • 新入社員とマネージャー、マネージャーと人事の1on1レビューミーティングを設定しましょう。

  • トレーニングの確認:新入社員からトレーニングに関するフィードバックをもらい、入社前の期待値と入社後30日間の現在地を比較するようにしましょう。

  • 人事/オンボーディングチームは、ミーティングに基づくアクションを記録しましょう。

※本レポートで共有されている見解および意見は個人の見解であり、各企業の公式見解を示すものではありません。

エイペックスのコンサルタントにキャリア面談を申し込む

最新の転職市場の動向など、

転職・人材に関するブログ記事はこちら