コロナ禍での法務担当者のリモートワーク率は高く、Business Lawyersが2020年に行ったアンケートによると、法務担当者の在宅勤務率は実に86%、そのうち89%が「法務は在宅勤務で対応可能」と回答しています。ここ3年のコロナ禍により、弁護士の方にとっても働き方が大きく変わったことは間違いありません。
法務とリモートワークの相性
法務は契約書の作成やレビュー、法令リサーチといった専門的な知的作業がメインの職種であり、チームでの作業が必須となる場面が少ないため、リモート勤務との相性が良いと言えます。
仕事の進め方にも比較的裁量があり、他者の意見や進行状況に左右されず自己完結が可能です。もちろん、ビジネス側の要望や期限などに沿って進行が必要となりますが、一度これらを固めてしまえば後は自分のペースで作業に集中することができます。
このため、法務とリモートワークとの相性は良いと言われてきました。
コロナ禍以前のリモート勤務
法律事務所ではコロナ禍以前から、働き方における環境整備が進んでいました。事務所勤務の弁護士は時間や場所を問わず案件対応が求められるため、それを可能にするシステム構築が必要だったことが主な理由です。つまり、テレワーク導入による弁護士の生活の質向上という観点ではなく、生産性や利便性向上のための環境整備であり、弁護士が理由なく日中にテレワークをすることはありませんでした。
また、法律事務所では弁護士は大事な稼ぎ手であり、クライアントとの対面ミーティングは貴重なビジネスチャンスとなります。クロージング時など、多忙な際も他の弁護士やサポートスタッフと協働して案件を進めるためオフィスに出社せざるを得ず、この慣習が変わらない限りテレワークは物理的に不可能であることが多いでしょう。
一方インハウスでは、一部の企業のみが育児や介護のための福祉的な観点からリモート環境を整えているような状況でした。テレワークは「権利」ではなく社員への「便宜供与」、というマインドセットが企業側も社員側も一般的だった印象です。
また、日本企業では法務部が契約書の押印作業や管理にあたることも多いため、この点はリモートワークとの相性が良くなく、実際にこの紙文化が法務担当者の在宅勤務を難しくした大きな要因になっています(2020年Business Lawyersアンケートより)。
コロナ禍後の働き方はどうなる?
コロナ禍が少し落ち着いた現在、今後の働き方をどのように決定していくかまだ試行錯誤の段階と言えますが、多くの企業がコスト削減や有能な人材の確保のための方策として、フルリモートワークもしくは在宅と出社のハイブリッド勤務の継続を決めています。
公益財団法人 日本生産性本部が実施した「第9回 働く人の意識調査」では、テレワーク可能な勤務先において週3回テレワークを行っているのは、2022年4月で50%以上に上っており、今後もこのトレンドが続くことが見込まれます。
つまり企業勤務では、今後も継続してリモートワーク、もしくは一部リモートワークの可能性が高く、エイペックスが取り扱っている案件でも多くのリーガルポジションがリモートワーク可能です。
ただしこれは企業の法務担当者に言えることであり、法律事務所では必ずしもリモート勤務が推奨されているとは限りません。一部にはフルリモートワークが可能な法律事務所もありますが、一般的には弁護士はいわば営業部隊でもあることから、リモート勤務が可能である頻度は相対的にも低いと言えます。
まとめ
テレワークの一番のメリットは、通勤ストレスの緩和や非効率な会議の減少、自分のペースで業務に集中できるなど仕事の効率化・生産性の向上であり、その分自分の時間が取りやすくなることでワークライフバランスが充実することです。上述のアンケートでは、法務担当者のテレワーク実施の満足度は高く、働き方の変化がポジティブに影響したと言えるでしょう。
リモートワークの実施が有能な人材の引き止めにも有効であると多くの企業が気づいたこともコロナ禍の収穫の一つです。リモート環境が存在していても特にジュニアの立場では利用しづらい状況だったかと思いますが、今後は社員に対し一律でリモートワーク、ハイブリッド勤務を認める事務所が増えてくるかもしれません。
昨今は「転職するならテレワークを実施しているところが良い」と考える求職者の方が増えてきました。エイペックスではリーガル・弁護士に特化した業界チームがありますが、企業・事務所のポリシーも日々変わっています。専門のコンサルタントから最新情報を入手することも、転職成功や充実したキャリア形成のカギとなります。ご自身の働き方についてもプロにご相談いただけますので、是非一度エイペックスのキャリア相談会にお越しください。