会計に強い人材はいつの時代でも需要がありますが、特に近年は「管理会計」や、外資系企業での「FP&A(Financial Planning & Analysis)」の人材募集が増え注目されています。
財務分析や管理を行うだけに留まらず、経営者に寄り添い事業戦略の立案や経営上の意思決定をサポートする管理会計者は、大変やりがいの大きい、また企業にとっても重要なポジションです。では、企業が求める人材、特に付加価値の高い人材とはどのようなものなのでしょうか。
財務会計(制度会計)と管理会計の違いとは?
まずはじめに、財務会計/制度会計と管理会計の違いについてご紹介しましょう。
財務会計の目的は、日々の取引や営業活動が最終的に有価証券報告書(上場企業)や、税務申告書に付属している財務諸表に反映・表現されることにあります。これによって、企業外部のステークホルダーに企業の財務状態や経営状況を示すことができます。企業としては、会計原則に則り企業の経営情報を開示することで様々な利害関係者と良好な関係を保ち、資金調達などを円滑に進める目的がありますので、内容の客観性や正確性が最も求められます。
一方で管理会計は、Management Accounting - すなわち経営陣 (Management) のための会計と言われ、経営上の決定に役立たせることが目的です。株主等の第三者に開示するために使用される会計基準=GAAPと矛盾のないように作成されながらも、原則として会社内部向けに導入される会計手法です。外資系企業であれば、FP&Aのポジションがこの業務を担当することが多く、担当する範囲や事業などの単位は個々の会社により違いますが、経営・事業戦略立案に必要なデータの集計や分析を行い、経営陣に財務的なアドバイスを行うのが仕事です。
投資家の信頼を得るための管理会計
このように管理会計は、財務会計のように法的もしくはそれに準ずる制度に基づき行われるものではありません。そのため、どのような財務情報を反映させるか、どんなデータ収集の方法を用いるのか、期間はどうするのかなど実施について制約がなく、実際のところ会社が100社あれば100通りの管理会計手法が存在します。つまり、自社にとって最適な業績管理ができ、それを経営陣の意思決定に役立てることができれば何でもOKということになります。
とはいえ、管理会計で最も重要なのは、中期経営計画に資するような予算策定とモニタリングであると考えられます。特に中期経営計画は、投資家や専門家(コンサルタントやバンカー等)に対する重要なプレゼンテーションであり、将来の事業の成長性や予算と対比した場合の業績進捗度・将来の業績目標等が数値化されているため、投資家にとっては投資判断に役立つ資料になります。
上場企業を例にとると、会社のウェブサイトにはInvestor Relation (IR)のページが設置されていますが、IRでは決算数値のほかに、中期経営計画(中計)や投資家とのコミュニケーションに使用される資料も含まれています。
管理会計は財務会計と有機的に結びついて実施されるため、管理会計手法が優れている企業は、投資家からの信頼を集めやすいと考えられるのです。
管理会計に求められる3つのスキル
では、企業にとってますます需要な職責を担う管理会計者には、どのようなスキルが求められているのでしょうか。ひとつにはもちろん、原価計算、財務会計の知識が挙げられますが、その他に経営者が求める人材像とはどんなものなのでしょうか。これから転職活動を始められるのであれば、以下に挙げるスキルをご自身の具体的な業績や過去の経験と紐づけてアピールする必要があります。(採用面接では、STARメソッドを使った回答が有効です。)
コミュニケーション能力
管理会計者はただ集めたデータで財務分析をするだけでなく、そこからどのような考察が得られたのか、今後の事業展開へのアドバイスを説明できるプレゼンテーション能力が必要です。そのためには、経営者が何を求めているのか、知りたいことは何なのかを理解できることが大事で、いかにCレベルの上級管理職と上手にコミュニケーションが取れるのかが問われます。
分析能力
近年は投資家との円滑なコミュニケーションを維持するため、企業価値向上に資するような全社的な管理会計体制の整備が重要になっています。例えば、メーカーで製品やセグメント間の製造原価の比較可能性を担保するために原価計算を見直し、収益性の観点からプロダクトミックスの改善をしたり、予算と実績の差異分析を実施しモニタリング機能を強化させたりなど、管理会計者には分析力が必須です。また、トップマネジメントに対する差異分析の説明や、財務関係との連動を説明する能力も求められますので、数値分析能力も重要な資質になります。
経営者マインド
管理会計の目的は、経営上の意思決定に役立たせることにあります。トップマネジメントとの協議やコミュニケーションの中で、単に求められる分析結果を示すだけでなく、経営者目線で結果をどう今後の事業に活かすか、管理会計者なりの見解が求められます。先ほど「会社が100社あれば100通りの管理会計手法が存在する」とお伝えしましたが、会社のより良い未来のために、ファイナンスのスペシャリティとしてご自身が主体的に考える見識があってこそ、あなたの人材としての価値が高まることになるでしょう。
デジタル×管理会計はより需要が高い
また、上記のスキルもちろん重要ですが、今はDX(デジタルトランスフォーメーション)やAI(人口知能)などのデジタルに強い人材が大変好まれる傾向にあることもお伝えします。管理会計分野の人材は求人も年々増えており今後も増加が見込まれますが、その中でもAIなどデジタルと管理会計の橋渡しになるような人材は、非常に競争力があり高年収も狙えるポジションと言えるでしょう。これから管理会計者としてご自身に「付加価値」をつけたいのであれば、デジタルでの強みをアピールすることはとても有効です。
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