臨床開発において、今リアルワールドデータ・リアルワールドエビデンスの活用が注目されています。そこで、リアルワールドデータと臨床試験データの違い、新薬開発での活用の可能性から人材ニーズの高まりなどについてご紹介していきます。
目次
リアルワールドデータ・リアルワールドエビデンスとは？
臨床試験データとの違い
新薬開発における活用の可能性
人材の需要増加の今
リアルワールドデータ・リアルワールドエビデンスとは？
リアルワールドデータ（以下RWD）とは、患者の健康状態や治療内容に関するデータを集約したもので、医療ビッグデータのことを指します。日常の臨床現場で集められたデータが集約されるため情報量は膨大かつ多様性が高く、方法次第で様々な目的で活用出来る可能性を秘めています。
具体的には、レセプトデータ、DPCデータ、電子カルテデータ、健診データ、患者レジストリデータなど、日常の診療で記録されるすべてがRWDに該当します。日本全国の医療機関からそれらの膨大なデータを吸い上げるのですが、様々な既往歴や複数の疾患を有する合併症患者のデータも混ざるため、一つの疾患について解析を行うといったような目的よりもさらに汎用性の高いデータとなります。
RWDに対し、リアルワールドエビデンス（以下RWE）はRWDを解析した結果得られるエビデンス（科学的根拠）を指します。
臨床試験データとの違いは「データの性質」
一方臨床試験データは、プロトコルで定められた基準をクリアした患者のみを対象に集めた統計目的のデータです。そのため、日常の診療行為から蓄積されたRWDと比較して多様性は劣りますが、正確性や信頼性の高いデータと言えます。
RWDと臨床試験データは同じ医療データではありますが、その違いは「データの性質」。一般的な背景を持ち多様性が高いデータがRWD、定められた基準に則って収集した正確性の高いデータが臨床試験データです。
そのため、多様な背景を持つ患者のデータが大量に必要な場合は、RWDが有効に活用できるでしょう。
| 臨床試験データ | RWD |
データの種類 | 治験薬の被験者に対して行う実施計画に基づいて記録されるデータ | 日常の診療現場で記録されるすべてのデータ＝医療ビッグデータ |
データの特徴 | 定められた基準に則って収集するため正確性・信頼性が高い | 情報量が膨大で多様性・汎用性が高い |
データの用途 | 医薬品の安全性・有効性を検証するための統計目的のデータ | 方法次第で様々な目的で活用が可能 |
新薬開発におけるRWD活用の可能性
このように様々な分野での活用が期待されるRWDですが、製薬企業が行う新薬開発の分野においてもその多様性を活かして活用を促進していこうという動きが活発になっています。
例えば、患者数が少ない希少疾患や小児疾患における薬剤開発の臨床試験では、対照群が必要な二重盲検試験が行いづらく開発自体も活発には行われていません。製薬企業も需要は理解しつつも、開発コストや期間、プロトコルの難しさなどを考えるとなかなか手が出しにくいというのが実情です。
しかし、RWDを活用すれば実薬群の患者のみを集め、対照群についてはデータで代替すれば実施が可能です。コスト・マンパワーの両方をカットでき、製薬企業や医療機関の治験実施のハードルはぐんと下がることになります。これにより、患者数の少ない希少疾患や小児疾患であっても活発な新薬開発が期待出来るというわけです。
事実、欧米ではこのような活用が進んでおり、実際に対照群としてRWDが使用され新薬が承認されています。このように、すでに国外ではRWDが持つデータの多様性を上手く活用した治験が行われています。
この他にも、新薬研究の段階でRWDを活用して参入のリスクファクターを分析し、開発失敗のリスク回避やコストカットを実現しながら適切な患者に薬を届けようという試みがあります。市販後についても、データ分析の際に活用して正確性を高めたりコスト削減を図ったりと、製薬企業におけるRWD・RWEの活用は今後さらに促進されることが期待されています。
RWD・RWE人材の需要も増加
今後の医薬品開発においては、「RWD・RWE×デジタル技術」がトレンドになっていくことが必須である一方、現時点では「RWD・RWEを取りまとめる部署や人材がいない」という理由で、RWD・RWEの利活用を足踏みしている企業もあります。
そのため、近年製薬企業やCRO（医薬品開発業務受託機関）ではRWDを扱える人材へのニーズが高まっており、エイペックスでも「RWD・RWE担当者」の求人募集が増えつつあります。RWDを用いた研究計画立案・データ解析、プロトコルなど治験プロジェクトへのインプットなどの業務ができる人材はまだ少なく、今後さらにニーズが高まっていくことが想定されます。
今後の臨床開発分野でのRWD・RWE活用の流れに上手く乗ることで、充実したキャリアを築くチャンスが広がります。このような組織の旗揚げ時には、手を上げてしっかりとアピールできるようこれからアンテナを張ってトレンドをチェックしていきましょう。
エイペックスでも、製薬業界専門チームが数多くの臨床開発職、RWD・RWE職のポジションをご紹介しています。業界の最新トレンド・採用トレンドについても無料でキャリア相談を行っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください！
