「リモートワークが浸透すれば、女性が社会でより活躍できるのではないか」という意見は、昔からよく取り上げられてきました。そしてコロナ禍は皮肉にも、リモートワークの普及に「貢献」したと言えます。では女性は、本当に在宅勤務が普及したことで働きやすくなったのでしょうか?
データから見るリモートワークの普及率
新型コロナウイルスが流行したことでリモートワークという働き方が当たり前になり、数多くの企業でこの働き方を取り入れるようになりました。
2022年7月に内閣府がまとめた統計※①では、リモートワークの実施率は全国では約30%に留まっていますが、東京都のテレワーク実施率調査(2022年6月発表)※②では、実施が実に56.7%にも達しています。また後者では、「今はまだ実施していないが、今後実施する予定がある」と答えた層が9.0%に上っており、特に都心部においてはリモートワークという働き方が一般的なものになりつつあると言えるでしょう。
出典:
※① 内閣府「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」p4
※② 東京都「テレワーク実施率調査結果をお知らせします!5月の調査結果」
リモートワークには弊害もある
リモートワークは通勤にかかる負担を減らすことができるうえ、時間を有効に活用できる働き方として好意的に受け入れられてきました。リモートワーク実施前と実施後で、「リモートワークにはどのようなメリットがあると思うか」を聞いた国のアンケートがありますが※④、そのアンケートでもほとんどすべての項目で、「実施前に想定していたよりも、実施後の方がさらにメリットを実感できた」と答えた層が多くなっています。
ただ、リモートワークにはデメリットもあります。
調査では同様に、「リモートワークの悪い点」についても聞いていますが、すべての項目で「実施前に想定していたよりも、実施後の方がさらにデメリットが大きかった」と答えた層が増えているのです。
さらに注目すべきは、「女性がリモートワークという働き方を選んだときの弊害」です。
リモートワークを行うことになれば必然的に家で過ごす時間が長くなるわけですが、ある企業の調査※⑤では、「在宅勤務よって逆にストレスが増えた」と答えた女性の割合は実に70%にも上っています。さらに、「家事の量が増えた」と答えた女性も40%近くになっています。対して男性の場合は、ストレスが増えた人は51%程度、家事の量が増えたと答えた人はわずか13.8%でした。
出典:
※④ 国土交通省「令和3年度テレワーク人口実態調査」p15-p16
※⑤ 積水ハウス「在宅中の家での過ごし方調査」
リモートワークか、それとも外で働くか?「自分らしい働き方」を考えたい
上記のデータをみれば、「リモートワークが普及しさえすれば、女性は社会でより活躍しやすくなる」とする考えが、必ずしも「正解」ではなかったことが分かります。
実際には、リモートワークはプライベートと仕事の区別がつきにくく、「家にいるのだから家事をしてほしい」「家にいるのだから子どもの面倒をみなければ」という意識を持ってしまいがちです。その結果として、仕事の効率が落ちたり、時間に余裕がなくなったり、ストレスが溜まることが頻発し、その傾向は女性に多く見られるのです。
もちろん、「在宅勤務になったことで化粧の必要がなくなり楽になった」「成果物を出しさえすればいつ仕事をしても良い業種なので、より私生活を充実させられるようになった」という人もいるでしょう。
いずれにせよリモートワークは、「この働き方を選ぶことで、すべての女性が楽になる選択肢」ではない一方で、「この働き方を選ぶと、すべての女性がよりストレスを溜めることになる選択肢」でもありません。それぞれのライフスタイルやライフステージ、価値観、仕事の性質や企業の方針を複合的に考慮して、リモートワークにするか、それとも従来通りの働き方にするか、はたまた両方を取り入れたハイブリッド勤務にするのかを「選択できる」、ということがこれからの働き方にとって大切と言えるでしょう。
まとめ
リモートワークにはメリットもデメリットも両方ある
リモートワークを実践した層は、する前と比べてメリットもデメリットも実感しやすい
リモートワークに切り替えることによって、女性はストレスと家事量が増えやすい
考え方やライフスタイル、仕事の性質や企業の方針を複合的に考慮して、リモートワークをするかしないかを決定できることが必要