医薬品の臨床開発における「プロジェクトマネージャー」、「ラインマネージャー」とはどういう職種なのでしょうか?今後臨床開発の現場でキャリアを積まれたい方にとっては、ご自身のキャリアアップとしてどちらも考えられる選択肢です。
そこで今回は、CRO(開発業務委託機関=製薬企業などから臨床開発業務を受諾する企業)に勤務する場合を想定した「プロジェクトマネージャー」と「ラインマネージャー」の違いを、
仕事内容と一日のスケジュール
求められるスキル
平均年収
などから詳しく解説します。最後に、転職の際の採用面接成功のポイントもありますので、ぜひ参考にしてみてください!
プロジェクトマネージャーとラインマネージャーの仕事内容の違い
治験と呼ばれる医薬品開発では、治験の進行状況を監視するモニタリングという業務があります。モニタリングでは、正しく安全に治験薬が投与されているかを監視し、得られたデータをもとに治験薬の安全性・有効性を確立していきます。このモニタリングを行う職種のことをCRA(臨床開発モニター)と呼びますが、そのCRAを統括するポジションにプロジェクトマネージャー(以下PM)、ラインマネージャー(以下LM)という職種が存在します。
同じマネージャー職ではありますが、この2つは何をマネジメントするのかで仕事内容に大きな違いがあります。
そこで、それぞれの典型的な1日のスケジュールを参考にして、両者の違いを見ていきましょう。
1. プロジェクトマネージャー
PMの仕事内容は、その名の通り治験というプロジェクト全体をマネジメントする役割を担います。具体的には、プロジェクトの計画立案から予算策定、実際のオペレーション業務を中心に行い、製薬会社であるクライアント周りの業務全般を担当します。
PMに最も求められるのは、クライアントのニーズを読み取り、それに見合った成果を出すことです。クライアントから課せられる達成目標は、期限及び予算内で治験を終了させることになるため、チームメンバーのマネジメントやコスト管理なども業務に含まれ、文字通り治験全体を管理し円滑にプロジェクトを進行していくことが仕事になります。
それではもう少し具体的なイメージを持っていただくため、ある日のPMの1日のスケジュールを見てみましょう。
9:00 | クライアントミーティング |
11:00 | チームメンバーのモニタリング報告書チェック |
12:00 | お昼休憩 |
13:00 | チームミーティング |
14:00 | 進捗状況について各メンバーと面談 |
16:00 | 予算管理・調整業務 |
17:00 | ラインマネージャーとのミーティング |
18:00 | 退勤 |
これらの業務の合間に、メールチェック、電話対応、各種報告書作成などをこなします。クライアントが海外の会社である場合は、ミーティングが早朝や深夜など勤務時間外になることもあります。
また、プロジェクトの進捗だけでなく予算管理もPMの大切な仕事となりますので、どの仕事にどれだけの工数をかけるのかを適宜調整しながらプロジェクトを進めていくことが重要になります。
2. ラインマネージャー
PMが臨床開発試験全体をマネジメントするのに対し、LMはCRAの管理、つまりピープルマネジメントが主な仕事となります。CRAの直属の上司として、CRAのスキル向上やパフォーマンス評価・指導、リソース調整を担うほか、CRAが担当する医療機関とのやり取りなども担っています。
どのCRAも心身ともに健康で最大限のパフォーマンスを発揮出来、将来の目標に向かって仕事に邁進出来る環境を作ることが第一に求められ、教育指導的立場の役職となります。LMの達成目標はCRA全体の質を上げることであり、それによってプロジェクトの品質を向上させ、期限と予算内でのプロジェクト完遂に貢献することとなります。
それでは、LMについても典型的な1日のスケジュールを見てみましょう。
9:00 | LM間ミーティング |
10:00 | 現在の状況やキャリア形成について各CRAと面談 |
12:00 | お昼休憩 |
13:00 | リソース調整ミーティング |
15:00 | 転職者採用面接 |
17:00 | プロジェクトマネージャーとのミーティング |
18:00 | 退勤 |
この他にも、部下であるCRAの病院訪問に同行したり、医療機関とのやり取りに調整役として介入したりする仕事もこなします。PMのようにプロジェクト毎に業務を担当しているのではなく、CRA一人ひとりをマネジメントしているため、日々複数のPMとコミュニケーションを取りながらCRAの状況把握に努めます。LM間ミーティングでは、新規プロジェクトに誰を配置するかなどチーム編成を考えます。
プロジェクトマネージャーとラインマネージャーに求められるスキルとは?
このように、同じ臨床開発の管理職であるPMとLMですが、それぞれ仕事内容が異なるため当然求められるスキルは違ってきます。今後転職を考えている方にとっては採用面接成功のポイントにもつながりますので、下記で詳しく説明していきます。
1. プロジェクトマネージャーは「計画実行力」「豊富な治験業務経験」「交渉力」が重要
PMに求められる主なスキルは、「計画実行力」「豊富な治験業務経験」「交渉力」となり、採用面接でもこの点に十分資質があるかを判断する質問をされます。
まず「計画実行力」ですが、治験業務をメインにマネジメントしているPMにとっては、必須のスキルとなります。治験中に起こりうるリスクを予測し、問題を回避できるように計画を立てられるか、そしてそれを滞りなく実行していくことでクライアントが求める成果物を作り上げていくことが出来るかを問われます。採用面接では、納期の遅れなど予期せぬ事態が起こったときの対処法など、計画通りにプロジェクトを実行していくためにどう対応したのか具体的なエピソードを問われることがあるでしょう。
また、PMは様々なプロジェクトを担当するため、「数」と「質」の点で「治験業務経験が豊富」であることが望まれます。治験には疾患特有の検査や解析方法などがありますので、クライアントから説明を受けずともそれらが理解できれば、よりクライアントのニーズを把握しやすく信頼関係の構築もスムーズになるでしょう。
最後の「交渉力」ですが、特にCROに従事するPMにとって大切なスキルです。製薬企業であるクライアントの要望に対し、言いなりにならず客観的な材料を持ち出し予算や進捗について交渉するスキルが求められます。きちんと根拠を示し相手に納得してもらえるディスカッションが出来ることで、自社にとってもスムーズに仕事を進めていくことが出来るため大切な能力となります。
そのために、日頃クライアントとどのようにコミュニケーションを取っているのか、何を一番大切にして関係構築に努めているのかなどを問われることもあるでしょう。
2. ラインマネージャーは「コーチングスキル」「人を見る目」「高いコミュニケーション力」
対して、人材管理が主な仕事となるLMに求められる主なスキルは、「コーチングスキル」「人を見る目」「高いコミュニケーション力」となり、採用面接でもこの点を問われる質問が出るでしょう。
まず「コーチングスキル」ですが、従来の指導方法であるティーチング、つまり問題の答えを教えるのではなく、答えを導き出せるように一人ひとりに寄り添う指導法などを使ってCRAを育成出来るかどうかを求められます。CRAが主体性、自律性を持つことでどのプロジェクトを担当しても成果を上げられるようになりますので、コーチングスキルに加えて人の育成や指導に対する考え方、熱意についても説得力のある話が出来ると良いでしょう。
直接の部下マネジメントの経験がなくとも、リーダー、メンター、教育担当など、何らかの人的マネジメントや指導の経験があれば、是非具体的な実績とともに面接で話をしてみてください。
また「人を見る目」についてですが、LMは各CRAの性格、得意・不得意分野、考え方のクセなどを理解し、それに合った指導が出来るかが問われます。決まった指導法ではなく、一人ひとりと密にコミュニケーションを取りながらそれぞれの資質や能力に合った方法で管理・指導していくことが求められますので、人を見る目、性格を把握する力が必要です。また、CRAの直属の上長であるLMはCRAの採用面接にも面接官として携わることがありますので、優秀な人材を見極められる能力は重要です。
いずれにしても、LMはCRAそれぞれが最も成果を上げられる環境を作ってあげることで会社の利益に貢献しますので、その点にやりがいを感じられなければ勤まらない職種でしょう。
また、LMはCRAとのコミュニケーションはもちろん、PMや医療機関とのやり取りも重要な仕事となります。社内外の様々な関係者と協働するため、時には意見の相違やミスコミュニケーションが起こったりしますが、そこで状況を打破できる「優れたコミュニケーション力」が必須です。それぞれが活発な議論をすることで、安全・正確に治験を進めていくという共通の最終目標を達成していきます。
プロジェクトマネージャーとラインマネージャーの平均年収
PMとLMの平均年収ですが、内資系、外資系、中小か大手でもちろん異なりますが、おおよそ共に800万円~1000万円からです。
ただ、経験によっては上限1,600万円くらいまでのオファーは十分に可能性があります。
CROに中途で採用された場合のCRAのおおよその年収が400万円~800万円となりますので、順調にキャリアを積んでいけばかなりの年収アップが見込めます。30代・40代でマネージャーになる人も多いので、同年代の年収と比べるとかなり高額な報酬が期待できる職種といって良いでしょう。
プロジェクトマネージャーとラインマネージャーの転職面接成功のポイント
では、PMやLMに転職を希望する場合、上記の他に何に気を付けて採用面接の準備をすれば良いのでしょうか?
PMとLMで共通して求められるスキルは、「マネジメント力」です。今までどういったチームをどういった方法でマネジメントし、どういった成果を上げたのかの経験談が面接で話せると良いでしょう。直面した課題に対する解決方法や工夫した点、解決した結果・成果、その成果の影響として起きた変化などを詳しく話せれば、非常に良いアピールになります。チームをどのように動かしてどんな成果を上げてきたのか、マネジメント力を発揮出来たエピソードを話しましょう。
加えて、PMの採用面接では今までどんなプロジェクトを担当してきたのか、疾患領域、グローバルプロジェクトやICCC案件の数など、治験経験のバリエーションが質問されます。また、具体的なエピソードを交えてクライアントとのコミュニケーションスキルの高さなどを伝えることが、面接成功のポイントとなります。
LMの場合は、チーム運営で工夫した点などを細かく話すことで、ピープルマネジメント力をアピール出来ます。面接官は、CRAがどういった働き方をしてきたのか、その結果どういった成果を生み出したのかということを知りたいと思っているため、具体的な経験を交えて話が出来るように準備しておきましょう。
幅広いキャリアパスで自分らしい働き方を
このように、同じ臨床開発職でも仕事内容が大きく異なるPMとLMですが、CRAにとっては臨床開発の現場でキャリアアップ・年収アップを目指していく場合には、両者は最適な選択肢です。そこから自分はどちらを目指したいのか、あるいは適性があるのかなども含めて、今までの経験やスキルを棚卸ししてみることが転職活動には大切です。
エイペックスでも、多くの方がPMやLMへの転職を成功させており、理想のキャリアアップ・年収アップを実現しています。特にCROでは、リモートワークなどの働きやすさ、女性の活躍の幅、プロジェクトの豊富さ、PMやLM以外の様々なキャリアの選択肢など、多くの働くメリットがあります。
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